第110回医師国家試験 E62(2016年)
正答:d・e
問題
72歳の男性。発熱と全身の倦怠感を主訴に来院した。
現病歴:2か月前に37℃台の発熱があり、かかりつけ医から抗菌薬を処方された。7日後に解熱したが、倦怠感と食欲低下は持続していた。10日前から38℃台の発熱があり、再度かかりつけ医を受診した。抗菌薬と解熱薬とを処方されたが、発熱と倦怠感が持続するため受診した。
既往歴:高血圧症と糖尿病で内服治療中。
生活歴:一人暮らし。無職。喫煙は20本/日を50年間。飲酒はビール1,000〜1,500 mL/日を50年間。
家族歴:父親が胃癌で死亡。母親が大腸癌で死亡。
現症:意識は清明。身長182 cm、体重90 kg。体温38.0℃。脈拍108/分、整。血圧138/80 mmHg。呼吸数20/分。SpO₂ 96%(room air)。皮膚は乾燥している。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。口腔内は乾燥が著明である。頸静脈の怒張を認めない。表在リンパ節を触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。腸蠕動音は正常。肋骨脊柱角に叩打痛を認めない。下腿に浮腫を認めない。神経学的所見に異常を認めない。
検査所見:尿所見:蛋白1+、糖3+、ケトン体1+、潜血(−)、沈渣に白血球を認めない。血液所見:赤血球440万、Hb 15.1 g/dL、Ht 44%、白血球14,500(桿状核好中球2%、分葉核好中球88%、好酸球0%、好塩基球0%、単球4%、リンパ球6%)、血小板32万、PT 87%(基準80〜120)。血液生化学所見:総蛋白7.1 g/dL、アルブミン3.5 g/dL、総ビリルビン0.5 mg/dL、直接ビリルビン0.2 mg/dL、AST 57 IU/L、ALT 43 IU/L、LD 355 IU/L(基準176〜353)、ALP 349 IU/L(基準115〜359)、γ-GTP 109 IU/L(基準8〜50)、アミラーゼ38 IU/L(基準37〜160)、CK 76 IU/L(基準30〜140)、尿素窒素38 mg/dL、クレアチニン1.1 mg/dL、尿酸9.0 mg/dL、血糖284 mg/dL、HbA1c 9.6%(基準4.6〜6.2)、総コレステロール174 mg/dL、トリグリセリド179 mg/dL、Na 135 mEq/L、K 4.9 mEq/L、Cl 105 mEq/L。CRP 11 mg/dL。心電図で洞性頻脈を認める。胸部エックス線写真で異常を認めない。
その後の経過:精査のため入院とし、腹部超音波検査で肝膿瘍を認めた。超音波ガイド下膿瘍穿刺吸引検査を行い、採取した穿刺液を培養検査に提出し、抗菌薬の投与を開始した。培養検査ではGram陽性球菌が検出された。
抗菌薬投与に加えて、早期に行うべき治療はどれか。2つ選べ。
a.肝切除術
b.免疫グロブリン製剤投与
c.内視鏡的逆行性胆道ドレナージ
d.超音波ガイド下膿瘍穿刺ドレナージ
e.インスリンによる血糖コントロール
正答の理由
培養検体採取のための穿刺吸引は既に行われたが、膿瘍腔が残る場合は画像ガイド下の排液・ドレナージで感染源を制御する。血糖284 mg/dL、HbA1c 9.6%のため、抗菌薬と並行してインスリンで血糖を管理する。穿刺吸引で膿瘍が完全に排液されれば、留置カテーテルは必須ではない。
各選択肢の検討
a.誤り。通常は経皮的ドレナージが先行し、肝切除は難治例などに限られる。
b.誤り。免疫グロブリン補充を要する病態は示されていない。
c.誤り。胆管炎や胆道閉塞を示す所見はなく、胆道ドレナージの適応ではない。
d.正しい。穿刺吸引後も膿瘍腔が残る場合、画像ガイド下ドレナージは感染源制御となる。
e.正しい。著明な高血糖を是正し感染治療を支える必要がある。
覚えるポイント
肝膿瘍治療では抗菌薬、適切なドレナージ、基礎疾患の管理を組み合わせる。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第110回医師国家試験問題および正答
- 厚生労働省:第110回医師国家試験問題(E問題)
- 厚生労働省:第110回医師国家試験正答値表
- 原著:Non-operative management of pyogenic liver abscess
- 原著:肝膿瘍の穿刺吸引とカテーテル排液の無作為比較
- 日本糖尿病学会:糖尿病診療ガイドライン2024・感染症時の管理
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。