第109回医師国家試験 B42(2015年)
正答:c
問題
6歳の女児。発達の遅れを心配した母親に連れられて来院した。乳幼児期から言葉や歩行の発達が遅れ、知的障害を伴っていた。遺伝性の疾患が心配で受診が遅れたが、地域に同じような症状を訴える人がいることがわかり心配になって受診した。妹も同じ症状がある。感染症を示唆する所見はない。医師が相談した保健所のその後の調査により、言語障害、歩行障害および知的障害のいずれかを認める多数の患者の存在が次第に明らかになった。患者が居住する人口約10万人の湾岸地域における環境汚染物質による曝露が疑われるが、原因は特定できていない。
このような状況で、患者集団に対する初期の対応として適切なのはどれか。
a.地域住民の集団移転
b.裁判による患者認定
c.患者の生体試料の収集
d.患者と家族の遺伝子検査
e.行政による被害認定のための審査
正答の理由
環境曝露と患者集積が疑われ、原因物質が未特定の段階では、患者の臨床情報・曝露情報と生体試料を系統的に集めて病像と曝露の範囲を調べるのが初期の疫学調査です。個人の補償認定や集団移転、遺伝性の確定を先行させる状況ではありません。
各選択肢の検討
a.地域住民の集団移転は曝露源や健康影響の確認後に行政が検討する対策であり、初期調査そのものではありません。
b.裁判による患者認定は原因・責任の判断を伴う法的手続きで、原因不明の患者集積調査の初手ではありません。
c.正しい。生体試料を含む臨床・曝露情報を収集すれば、患者の特徴や曝露状況を記述し、原因仮説の検討に役立ちます。
d.同胞例は遺伝性を考える手掛かりですが、同地域で多数発生し環境曝露が疑われる集団に対し、患者全員の遺伝子検査を最初に行う根拠にはなりません。
e.行政の被害認定は補償・救済の制度的判断であり、原因や曝露の把握を目的とした初期調査とは異なります。
覚えるポイント
環境由来の患者集積では、まず症例・曝露・生体試料を系統的に集めて分布と原因を調べる。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。