Broca失語と左前頭葉梗塞|第107回医師国家試験I74

第107回医師国家試験 I74(2013年)

正答:b

問題

78歳の男性。本日の夕方、風呂から上がった直後から言葉がもつれ、家族に意思がうまく伝えられなくなったため救急外来を受診した。脈拍88/分、不整。血圧120/80 mmHg。意識は清明だが、口数が少なく、「頭は痛いですか」と尋ねると、口ごもるように「い、い」と答え、「さくら」の復唱を指示すると「さ、た」と言う。「目を閉じてから左手を上げてください」と指示すると、間違いなく行う。右口角の動きが不良だが、上下肢の麻痺は明らかではない。頭部MRIを行った。

別に示す頭部MRIの拡散強調像(別冊No. 26 ①〜⑤)のうち、この患者の頭部MRIとして考えられるのはどれか。

a.①

b.②

c.③

d.④

e.⑤

頭部MRI拡散強調像の横断像5枚(①〜⑤)。①左大脳半球の広範な高信号、②左前頭葉弁蓋部〜島周囲の高信号、③左頭頂葉(側脳室体部の高さの外側皮質・皮質下)の高信号、④左側脳室体部外側の放線冠の円形高信号、⑤左後頭葉内側の高信号
別冊No. 26 ①〜⑤ / 出典:厚生労働省・第107回I別冊(原本の該当ページ)

正答の理由

心房細動を疑う不整脈があり、突然発症した発語障害です。口数が少なくたどたどしい非流暢な発話と字性錯語(「さくら」→「さ、た」)、復唱障害を示す一方、複雑な口頭指示は正しく実行でき理解は保たれています。右口角の運動不良のみで四肢麻痺はなく、左前頭葉弁蓋部(Broca野周辺)の限局した心原性塞栓症によるBroca失語(運動性失語)が考えられ、②が該当します。

画像の見方

画像の右側が患者の左側(放射線学的表示)として判読。①左中大脳動脈領域の前頭葉〜側頭・頭頂葉に及ぶ広範な高信号。②左前頭葉の弁蓋部(下前頭回後部)〜島周囲に限局した高信号。③側脳室体部の高さで左頭頂葉の皮質・皮質下に高信号。④側脳室体部外側の左放線冠に限局した円形高信号(皮質は保たれる)。⑤左後頭葉内側(後大脳動脈領域)の高信号(独立レビューで再読影。公式所見はない)。

各選択肢の検討

a.誤り。①は左中大脳動脈領域の広範な梗塞で、Broca野とWernicke野を含み全失語と右片麻痺・感覚障害を来すはずです。理解が保たれ四肢麻痺がない本例と合いません。

b.正しい。②は左下前頭回後部(弁蓋部)〜島周囲の限局した梗塞で、非流暢な発話・錯語・理解の保持を示すBroca失語と、顔面下部の麻痺のみという所見に合います。

c.誤り。③は側脳室体部の高さの左頭頂葉の梗塞で、前頭葉のBroca野は保たれます。左頭頂葉〜上側頭回周辺の障害では伝導失語(流暢・復唱障害)やWernicke失語(理解障害)を来しやすく、非流暢で理解の保たれた本例と合いません。

d.誤り。④は左放線冠の深部白質に限局した梗塞(ラクナ梗塞)で、皮質症状を伴わない純粋運動性片麻痺などが典型です。皮質の言語野は保たれ、上下肢の麻痺がなく失語を示す本例と合いません。

e.誤り。⑤は左後大脳動脈領域(後頭葉内側)の梗塞で、対側(右)同名半盲や記憶障害などを来しますが、Broca野は含まれず非流暢性失語の説明になりません。

覚えるポイント

非流暢・錯語・理解保持はBroca失語=左下前頭回後部(弁蓋部)。理解障害が目立てばWernicke野(左上側頭回後部)。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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