第107回医師国家試験 I70(2013年)
正答:e
問題
72歳の5回経妊5回経産婦。数年前から持続する外陰部違和感を主訴に来院した。外陰部の写真(別冊No. 23)を別に示す。
この疾患の症状でないのはどれか。
a.頻尿
b.尿失禁
c.帯下増加
d.性器出血
e.鼠径部痛

正答の理由
多産の高齢女性で数年来の外陰部違和感があり、写真では腟口から腟壁に覆われた腫瘤(子宮)が脱出しており、子宮脱(骨盤臓器脱)です。腟の圧迫感・下垂感のほか、膀胱の下垂による頻尿・尿意切迫・尿失禁や排尿障害、脱出部の擦過によるびらん・潰瘍からの出血や分泌物増加が起こります。鼠径部痛は骨盤臓器脱の症状ではありません。
画像の見方
腟口から鶏卵大以上の表面平滑な腫瘤が脱出しており、腟壁に覆われた子宮が脱出した像と考えられる。先端部(子宮腟部付近)は発赤しびらん状にみえる(独立レビューで再判読し同意。公式所見はない)。
各選択肢の検討
a.症状である。子宮・腟前壁とともに膀胱が下垂し、頻尿や尿意切迫感を伴います。
b.症状である。尿失禁はしばしば合併し、尿道の屈曲が整復されると潜在していた腹圧性尿失禁が明らかになることもあります。
c.症状である。腟外に露出した腟壁・子宮腟部の粘膜は乾燥・肥厚し、慢性炎症・浮腫・潰瘍を生じます。こうした炎症・潰瘍部からの分泌物の増加(帯下増加)や不正出血を伴うことがあり、高度子宮脱の症例報告でも悪臭のある帯下や点状出血が記載されています。
d.症状である。脱出部の潰瘍は痛みや出血を起こすことがあり、外陰腟炎や皮膚疾患との鑑別を要します。
e.症状でない(正答)。骨盤臓器脱では腟の圧迫感・下垂感、腰痛、下腹部の牽引感などはみられますが、鼠径部痛は本症の症状として挙げられず、鼠径ヘルニアなど別の疾患を考えます。
覚えるポイント
子宮脱:多産・高齢・閉経後。下垂感に加え排尿症状(頻尿・尿失禁・排尿困難)、脱出部のびらん・潰瘍による出血・帯下。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第107回医師国家試験問題および正答
- MSD Manual Professional Edition: Uterine and Apical Prolapse
- 市立札幌病院 子宮脱センター
- Vaginal Ulcers Secondary to Stage IV Uterine Prolapse Treated With L-PRF. Clin Case Rep. 2026 (PMID 41756707)
- Unani Therapy in Fourth-degree Uterovaginal Prolapse With Multiple Decubitus Ulcers: A Case Report. Altern Ther Health Med. 2023 (PMID 35839115)
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。