縦隔胚細胞腫瘍|第107回医師国家試験I52

第107回医師国家試験 I52(2013年)

正答:c

問題

22歳の男性。胸部圧迫感を主訴に来院した。1週前から胸部圧迫感と労作時の息切れとを自覚し、徐々に悪化している。体温 37.2 ℃。脈拍 88/分、整。血圧 110/72 mmHg。呼吸数 20/分。SpO2 96 %(room air)。身体所見で左呼吸音の減弱を認める。血液所見:赤血球 462 万、Hb 14.0 g/dl、Ht 43 %、白血球 7,800、血小板 35 万。血液生化学所見:総ビリルビン 0.3 mg/dl、AST 23 IU/l、ALT 15 IU/l、LD 450 IU/l(基準 176〜353)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン〈hCG〉24 mIU/ml。CRP 4.8 mg/dl。ツベルクリン反応陽性。胸部エックス線写真(別冊No. 13A)と胸部造影CT(別冊No. 13B)とを別に示す。

最も考えられるのはどれか。

a.胸腺腫

b.神経鞘腫

c.胚細胞腫瘍

d.リンパ節結核

e.サルコイドーシス

胸部エックス線正面像。左肺門部から左下肺野にかけて広い均等な濃度上昇があり、左心縁と左横隔膜内側が不明瞭。右肺と左上肺野の含気は保たれている
別冊No. 13A / 出典:厚生労働省・第107回I別冊(原本の該当ページ)
胸部造影CT横断像。前縦隔の左側に左胸腔の大部分を占める大きな腫瘤があり、内部は不均一に造影され低吸収域を含む。腫瘤は大血管の前方から左外側へ張り出し、左肺を背側へ圧排している
別冊No. 13B / 出典:厚生労働省・第107回I別冊(原本の該当ページ)

正答の理由

22歳男性の前縦隔巨大腫瘤で、LD上昇とhCGの軽度上昇を伴います。若年男性の前縦隔腫瘍で腫瘍マーカー(hCG、AFP、LD)が上昇していれば、性腺外(縦隔)胚細胞腫瘍を最も考えます。縦隔胚細胞腫瘍はセミノーマと非セミノーマに分かれ、腫瘍マーカーの値は組織型の推定にも使われます。精巣原発の転移を除外するため精巣の診察・超音波も行います。ツベルクリン反応陽性はBCG接種でも陽性となり、特異性は低い所見です。

画像の見方

No. 13Aでは左中下肺野を中心に縦隔から連続する大きな均等影があり、シルエットサインで左心縁が追えない。No. 13Bでは上行大動脈・肺動脈の前方〜左側の前縦隔に境界比較的明瞭な巨大腫瘤があり、内部は不均一な造影効果と斑状の低吸収(壊死・変性を疑う)を示し、左肺は背外側へ圧排されている。石灰化や脂肪成分は図からは明らかでない。

各選択肢の検討

a.誤り。胸腺腫は成人の前縦隔腫瘍の代表で、重症筋無力症(胸腺腫の30〜65%)などの自己免疫疾患を合併しやすい腫瘍です。hCG上昇を伴う若年男性の巨大腫瘤では胚細胞腫瘍を優先して考えます。

b.誤り。神経鞘腫などの神経原性腫瘍は後縦隔(傍椎体)に好発します。本例の腫瘤は前縦隔にあり、hCG上昇も説明できません。

c.正しい。若年男性・前縦隔の巨大腫瘤・hCGとLDの上昇は、性腺外胚細胞腫瘍の典型的な組合せです。

d.誤り。結核によるリンパ節腫大は中縦隔のリンパ節腫大の原因となりますが、本例は前縦隔の単発巨大腫瘤です。ツベルクリン反応陽性はBCG接種やNTM感染でも生じ、結核の根拠になりません。

e.誤り。サルコイドーシスは両側肺門リンパ節腫脹が最も多い所見で、片側前縦隔の巨大腫瘤やhCG上昇とは合いません。

覚えるポイント

前縦隔腫瘍は「4つのT」(胸腺腫・奇形腫/胚細胞腫瘍・リンパ腫・甲状腺)。若年男性+hCG/AFP/LD上昇なら胚細胞腫瘍。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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