第107回医師国家試験 H18(2013年)
正答:e
問題
我が国における尊厳死について正しいのはどれか。
a.法的な許容要件が確立している。
b.文書によるリビングウィルの存在が必須である。
c.患者の苦痛軽減を目的とする持続的な鎮静のことである。
d.医師が致死薬を患者に投与して死に至らしめることである。
e.患者の自己決定権と人間としての尊厳を守ることが目的である。
正答の理由
尊厳死は、回復の見込みのない患者に対して過剰な延命医療を差し控え・中止し、尊厳をもって自然な死を迎えさせることを指す概念で、患者の意思(自己決定)と人間としての尊厳を尊重することを目的とします。日本学術会議は尊厳死を「過剰な医療を避け尊厳を持って自然な死を迎えさせること」とし、致死薬を投与する安楽死とは本来異なる概念と整理しています。わが国には尊厳死を規定する法律はなく、厚生労働省のガイドラインも手続き(決定プロセス)を示すにとどまります。
各選択肢の検討
a.誤り。わが国には尊厳死を定める法律はなく、法的な許容要件は確立していません。米国の多くの州のような自然死法・尊厳死法は制定されていません。
b.誤り。厚生労働省のガイドラインでは、患者の意思が確認できない場合は家族が推定する意思を尊重するなどの手順が示されており、文書によるリビングウィルは必須とされていません。
c.誤り。苦痛緩和のための持続的な鎮静は緩和ケアにおける治療手段(セデーション)であり、延命医療の中止を指す尊厳死とは別の概念です。
d.誤り。医師が致死薬を投与して死なせることは積極的安楽死であり、尊厳死とは本来異なる概念です。積極的安楽死は判例で極めて限られた条件下で認めうる場合があるとされたものの、厚生労働省のガイドラインでは対象外とされ、わが国に容認する法律はありません。
e.正しい。尊厳死は患者の自己決定権と人間としての尊厳を守り、過剰な延命医療を避けて自然な死を迎えさせることを目的とします。
覚えるポイント
尊厳死=過剰な延命医療を避け尊厳ある自然な死を迎えること(積極的安楽死とは別)。日本には法律がない。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第107回医師国家試験問題および正答
- 対外報告 終末期医療のあり方について-亜急性型の終末期について-
- 終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン
- 終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン解説編
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。