サリン中毒とコリンエステラーゼ活性低下|第107回医師国家試験G64

第107回医師国家試験 G64(2013年)

正答:e

問題

次の文を読み、63〜65の問いに答えよ。

25歳の男性。気分不良を主訴に来院した。

現病歴:官庁街近くのレストランで昼食をとっていたところ「液体のようなものがまかれた」という声がして、レストラン内で数人が倒れた。気分が悪くなったためレストランから飛び出し、徒歩で近くの病院を受診した。会話は可能であり、目の前が暗く感じ、鼻水が止まらないと訴えている。

患者を救急室で診察し以下の情報を得た。

既往歴:幼少時からアレルギー性鼻炎がある。

生活歴:独身。1人暮らし。会社員。喫煙は20本/日を5年間。飲酒はビール500 ml/日を5年間。

家族歴:母親が高血圧症で内服加療中。

現症:意識は清明。頭痛と悪心とを訴えている。体温36.8℃。脈拍108/分、整。血圧140/90 mmHg。呼吸数24/分。SpO2 92%(room air)。瞳孔は高度に縮瞳し、対光反射は消失している。鼻汁、流涎および発汗がみられる。四肢に運動麻痺を認めない。腱反射の異常を認めない。呼吸音に異常を認めない。心雑音を聴取しない。

この患者で予想される血液生化学所見はどれか。

a.CK高値

b.血糖低値

c.ALT高値

d.クレアチニン高値

e.コリンエステラーゼ〈ChE〉活性の低下

正答の理由

高度の縮瞳、鼻汁・流涎・発汗などのムスカリン様症状が急性に出現しており、神経剤(サリン)曝露と考えられます。神経剤は有機リン化合物で、アセチルコリンエステラーゼを阻害してアセチルコリンを過剰にします。診断は臨床的に行いますが、赤血球(または血漿)コリンエステラーゼ活性の低下で曝露を裏付けられます。

各選択肢の検討

a.誤り。神経剤ではニコチン様作用で線維束攣縮が起こりえますが、本例は麻痺も筋症状もなく、CK高値は特徴的な所見ではありません。

b.誤り。神経剤の作用はコリンエステラーゼ阻害によるアセチルコリン過剰で、血糖低下は本例で予想される特徴的所見ではありません。

c.誤り。サリンは肝細胞障害を起こす毒物ではなく、ALT上昇は曝露直後の特徴的所見ではありません。

d.誤り。急性の神経剤曝露で腎機能障害は特徴的でなく、クレアチニン高値は予想されません。

e.正しい。神経剤はコリンエステラーゼを阻害するため、赤血球・血漿のコリンエステラーゼ活性が低下し、曝露の確認と重症度の目安になります。

覚えるポイント

サリン(有機リン系神経剤)=コリンエステラーゼ阻害。縮瞳・分泌亢進が出て、血液ではChE活性が低下する。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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