部分胞状奇胎|第107回医師国家試験D40

第107回医師国家試験 D40(2013年)

正答:e

問題

33歳の2回経妊1回経産婦。無月経を主訴に来院した。経腟超音波検査で子宮内に胎囊と心拍とが確認され、妊娠6週4日の単胎妊娠と診断した。妊娠9週2日に施行した経腟超音波検査で子宮内胎児死亡と絨毛膜の異常とが確認されたため子宮内容除去術を行った。術前の血中hCG値は397,100 mIU/ml。妊娠9週2日の経腟超音波像(別冊No. 20A)と子宮内組織のH-E染色標本(別冊No. 20B、C)とを別に示す。

診断はどれか。

a.絨毛癌

b.進行流産

c.全胞状奇胎

d.存続絨毛症

e.部分胞状奇胎

妊娠9週2日の経腟超音波像。子宮内に変形した胎囊様の無エコー域があり、周囲の絨毛膜に多数の小囊胞状エコーがみられる
別冊No. 20A / 出典:厚生労働省・第107回D別冊(原本の該当ページ)
子宮内組織のH-E染色標本(弱拡大)。水腫状に腫大し輪郭が不整な絨毛が散在する
別冊No. 20B / 出典:厚生労働省・第107回D別冊(原本の該当ページ)
子宮内組織のH-E染色標本(強拡大)。絨毛表面に栄養膜細胞が並び、絨毛間質の血管内に有核赤血球がみられる
別冊No. 20C / 出典:厚生労働省・第107回D別冊(原本の該当ページ)

正答の理由

妊娠初期に胎児の心拍が確認されたのち子宮内胎児死亡となり、超音波では胎囊周囲の絨毛膜(胎盤)に多数の小囊胞状エコーがみられます。組織では水腫状に腫大した絨毛と、輪郭が不整(波状)な絨毛、軽度の栄養膜細胞増殖が混在し、絨毛間質に赤血球を含む血管(胎児血管)がみられます。胎児成分を伴う胞状奇胎であり部分胞状奇胎です。部分胞状奇胎は多くが三倍体で、胎児は生存できず流産に終わります。hCG高値は奇胎を示唆しますが、部分・全胞状奇胎の区別は胎児成分の有無と組織像で行います。

画像の見方

Aでは子宮内に不整形の胎囊様無エコー域があり、周囲の肥厚した絨毛膜に多数の小さな囊胞状エコー(小囊胞)が散在する。Bでは浮腫状に腫大し、波状・不整な輪郭をもつ絨毛と、比較的小さな絨毛が混在する。Cでは絨毛表面の栄養膜細胞の軽度増殖と、間質内に赤血球を含む血管(胎児血管。有核赤血球とみられる細胞を含む)がみられる。

各選択肢の検討

a.誤り。絨毛癌は胞状奇胎や妊娠ののちに発生しうる悪性の妊娠性絨毛性腫瘍で、本例のように妊娠中の子宮内容に胎児成分を伴う水腫状絨毛がみられる像とは異なります。

b.誤り。進行流産は子宮頸管が開大して流産が避けられない状態を指す臨床診断で、絨毛の水腫状腫大や栄養膜細胞の増殖を説明しません。

c.誤り。全胞状奇胎では胎児・胎児成分が形成されず、ほぼすべての絨毛がびまん性に水腫化し、周囲全体に栄養膜細胞が増殖します。本例は胎児心拍が確認され、絨毛内に胎児血管があります。

d.誤り。存続絨毛症は胞状奇胎の除去後にhCGが下降しない状態を指し、除去前の時点で診断する病名ではありません。

e.正しい。胎児成分(胎児心拍・絨毛内の胎児血管)を伴い、水腫状絨毛と正常に近い絨毛が混在するため部分胞状奇胎です。

覚えるポイント

胎児成分(胎児・胎児血管)を伴う胞状奇胎は部分胞状奇胎(多くは三倍体)。全胞状奇胎は胎児成分を欠く。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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