機能性(心因性)難聴の検査|第107回医師国家試験A56

第107回医師国家試験 A56(2013年)

正答:d・e

問題

16 歳の女子。1 週前からの左聴力の低下を主訴に来院した。両側鼓膜に異常を認めない。あぶみ骨筋反射は正常。純音聴力検査の結果(別冊 No. 26)を別に示す。

次に行うべき検査はどれか。2 つ選べ。

a.音叉検査

b.遊戯聴力検査

c.頭位変換眼振検査

d.自記オージオメトリ

e.聴性脳幹反応〈ABR〉

純音聴力検査(オージオグラム)。×(左気導)は40〜60 dB、○(右気導)は70〜110 dBで多くがスケールアウト、骨導は ](左)が左気導とほぼ同じ値、[(右)はスケールアウト
別冊No.26 / 出典:厚生労働省・第107回A別冊(原本の該当ページ)

正答の理由

オージオグラムでは主訴の左耳(×)が40〜60 dB、訴えのない右耳(○)が70〜110 dBでスケールアウトと、右の方が重い高度難聴として記録されています。一方、鼓膜は正常で、あぶみ骨筋反射(音刺激で誘発される他覚的反射)は正常に出ます。訴えの側・純音聴力検査の結果・他覚的所見が互いに一致せず、思春期女子であることからも機能性(心因性)難聴を疑います。次に、自記オージオメトリで断続音と連続音の記録の関係(断続音の閾値が連続音より悪いV型など非器質性難聴を示唆する型)をみるとともに、本人の応答に依存しない聴性脳幹反応(ABR)で他覚的に聴覚閾値を確認します。

画像の見方

記号は○=右気導、×=左気導、[=右骨導、]=左骨導で、左下向きの矢印は右耳、右下向きの矢印は左耳のスケールアウト(反応なし)を示す。左耳は気導・骨導とも約40〜60 dBの感音難聴型、右耳は気導70〜110 dB・骨導もスケールアウトの高度〜重度難聴として記録されている。主訴は左だけなのに右の方が重く記録され、しかも両耳とも鼓膜正常であぶみ骨筋反射が正常に誘発されることと合わない。

各選択肢の検討

a.誤り。音叉検査は伝音難聴と感音難聴のおおまかな鑑別に用いる自覚的検査で、非器質性難聴の判定や閾値の他覚的確認には役立ちません。

b.誤り。遊戯聴力検査は幼児向けの聴力検査で、16歳には用いません。

c.誤り。頭位変換眼振検査は良性発作性頭位めまい症など前庭系の評価で、めまいのない本例の聴力評価には不要です。

d.正しい。自記オージオメトリでは、断続音の閾値が連続音より悪く記録されるV型など、非器質性難聴を示唆する記録パターンを確認できます(1周波数だけのV型では特異的ではありません)。

e.正しい。ABRは本人の応答に依存しない他覚的検査で、実際の聴覚閾値を推定できます。

覚えるポイント

訴えの側と純音聴力の結果が合わず、あぶみ骨筋反射が正常なら機能性難聴を疑い、自記オージオメトリとABRで確認する。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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