第107回医師国家試験 A26(2013年)
正答:c
問題
1歳5か月の男児。発熱と鼻水とを主訴に母親に伴われて来院した。昨夜夜泣きをしてなかなか寝付かなかったという。食欲はある。体温38.2℃。呼吸音に異常を認めない。鼻汁が鼻内に充満している。咽頭所見で軽度の発赤と後鼻漏とを認める。右鼓膜の写真(別冊No. 6)を別に示す。
まず行うべき処置はどれか。
a.耳管通気
b.乳突洞削開術
c.抗菌薬の経口投与
d.鼓室換気チューブ留置術
e.副腎皮質ステロイドの経口投与

正答の理由
上気道炎に続く発熱と夜泣き(耳痛を示唆)、鼓膜の発赤と膨隆から急性中耳炎と診断できます。2歳未満で鼓膜の膨隆を伴う例は、経過観察よりも抗菌薬(高用量アモキシシリンが第一選択)の投与を考える対象です。日本の小児急性中耳炎診療ガイドライン(2018年版本文に、2013年版は2006年版と同一のスコア項目と記載)では、24か月齢未満に3点を加算し、発熱37.5〜38.5℃未満1点、啼泣・不機嫌1点、鼓膜の発赤2〜4点、部分的膨隆4点などを合算して重症度を判定します。本例は少なくとも中等症(6〜11点)以上に当たり、中等症ではAMPC高用量の投与から開始します(軽症なら3日間の抗菌薬非投与・経過観察)。MSD Manual(AAP 2013引用)も、年少・重症の小児では初期から抗菌薬を勧めています。なお2013年版の本文自体は公開終了で未読です。
画像の見方
右鼓膜は血管が拡張して発赤し、後半部を中心に外側へ膨隆している。鼓膜を通して黄色調の中耳貯留液が透見され、ツチ骨などの指標は不明瞭。
各選択肢の検討
a.誤り。耳管通気は滲出性中耳炎や耳管機能障害で用いる処置で、急性の化膿性炎症で鼓膜が膨隆している乳児に最初に行う処置ではありません。
b.誤り。乳突洞削開術は急性乳様突起炎や真珠腫などに行う手術で、合併症のない急性中耳炎の初期治療ではありません。
c.正しい。鼓膜の発赤・膨隆を伴う2歳未満の急性中耳炎で、日本のガイドラインのスコアでは中等症以上に当たるため、アモキシシリンなどの抗菌薬の経口投与をまず行います。
d.誤り。鼓室換気チューブ留置術は反復性中耳炎や遷延する滲出性中耳炎に対する処置で、初回の急性中耳炎にまず行うものではありません。
e.誤り。副腎皮質ステロイドの経口投与は急性中耳炎の治療として有効性が示されていません。
覚えるポイント
乳幼児の急性中耳炎は鼓膜所見と年齢・重症度で抗菌薬を判断し、膨隆を伴う2歳未満では抗菌薬(アモキシシリン)を用いる。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第107回医師国家試験問題および正答
- MSD Manual Professional Edition: Otitis Media (Acute)
- 小児急性中耳炎診療ガイドライン 2018年版(日本耳科学会・日本小児耳鼻咽喉科学会・日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会 編)
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。