第106回医師国家試験 H22(2012年)
正答:e
問題
69歳の男性。腹部膨満感と全身倦怠感とを主訴に来院した。1か月前から腹部の膨満感と全身倦怠感とを、2週間前から下腿がむくんでいることを自覚していた。3日前から全身倦怠感が著明となったため受診した。会社の健康診断で肝障害を指摘されていたが、自覚症状がなかったため医療機関を受診しなかった。60歳で退職後、血液検査を受けていない。15歳時の交通事故で輸血を受けたことがある。
身長165 cm、体重67 kg。体温36.8℃。脈拍76/分、整。血圧140/92 mmHg。手掌に発赤を認める。胸部聴診で異常を認めない。腹部は膨隆している。圧痛や抵抗はない。肝を触知しない。左肋骨弓下に脾を2 cm触知する。腫瘤を触れない。打診では体位変換で濁音境界が移動する。下腿に浮腫を認める。
血液所見:赤血球304万、Hb 9.8 g/dL、Ht 35%、白血球2,900、血小板7.0万。血液生化学所見:総蛋白6.0 g/dL、アルブミン2.5 g/dL、尿素窒素21 mg/dL、クレアチニン1.0 mg/dL、総ビリルビン2.1 mg/dL、AST 55 IU/L、ALT 40 IU/L。
この患者の重症度を判断するために重要性が低いのはどれか。
a.腹部造影CT
b.血液凝固検査
c.腹部超音波検査
d.上部消化管内視鏡検査
e.下部消化管内視鏡検査
正答の理由
腹水、脾腫、血小板減少、低アルブミン血症から非代償性肝硬変が疑われる。凝固能による肝予備能、画像による腹水・門脈圧亢進や肝癌、上部内視鏡による食道・胃静脈瘤の評価が重要である。下部内視鏡は、これらの評価に比べ本例では重要性が低い。
各選択肢の検討
a.腹部造影CT。肝形態、脾腫、腹水、腫瘍などを評価でき、病態把握に役立つ。
b.血液凝固検査。プロトロンビン時間/INRは肝合成能・肝予備能の評価に関係する。
c.腹部超音波検査。肝形態、腹水、脾腫、門脈系を評価する基本的検査である。
d.上部消化管内視鏡検査。門脈圧亢進症に伴う食道・胃静脈瘤や出血リスクを把握する。
e.下部消化管内視鏡検査。出血時などに大腸病変や直腸静脈瘤を調べる用途はあるが、肝予備能・腹水や食道胃静脈瘤の標準的な初期評価に比べ、本例では優先度が低い。
覚えるポイント
肝硬変では肝予備能に加え、腹水・静脈瘤・肝癌などの合併症を評価する。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第106回医師国家試験問題および正答
- Cirrhosis – Merck Manual Professional Edition
- 厚生労働省:第106回医師国家試験 H問題
- 厚生労働省:第106回医師国家試験 正答表
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。