第106回医師国家試験 G52(2012年)
正答:e
問題
68歳の女性。物忘れを主訴に夫に伴われて来院した。1年前から、話した内容を忘れてしまうことが多くなった。料理は得意であったが、最近は献立の種類が減り、簡単に作ることができるものばかりになった。既往歴に特記すべきことはない。
この患者に認められる症状はどれか。
a.失語
b.失行
c.失認
d.注意障害
e.遂行機能障害
正答の理由
1年の経過で進む近時記憶障害(話した内容を忘れる)に加え、得意だった料理で「献立の種類が減り、簡単に作れるものばかりになった」ことが読み取れます。料理は献立を考え、材料をそろえ、複数の工程を段取りよく並行して進める作業で、計画・順序立て・切り替えを担う遂行機能の典型的な評価場面です。手の動きそのもの(失行)や物の認識(失認)、言葉(失語)の障害を示す記載はありません。認知症診断で評価する認知領域(複雑性注意・遂行機能・学習と記憶・言語・知覚運動)のうち、本例で記載があるのは記憶と遂行機能です。
各選択肢の検討
a.誤り。失語は言葉の理解・表出の障害で、喚語困難や錯語などとして現れます。本例は「話した内容を忘れる」という記憶の問題で、言語機能の障害を示す記載はありません。
b.誤り。失行は運動機能が保たれているのに習得済みの動作(道具の使用、着衣など)ができない状態です。料理の作業自体はできており、包丁や調理器具を使えないという記載はありません。
c.誤り。失認は感覚が正常でも物や顔などを認識できない状態です。食材や器具を見分けられないといった記載はありません。
d.誤り。注意障害は集中の維持や同時処理が困難になる症状で、せん妄で前景に立ちます。本例は意識障害の経過ではなく、記載されているのは記憶と段取りの低下です。
e.正しい。献立を考え段取りよく調理する能力が落ちて簡単な料理しか作れなくなっており、計画・実行を担う遂行機能障害に当たります。
覚えるポイント
料理・買い物・家計管理の段取りが崩れる=遂行機能障害。Alzheimer型認知症では近時記憶障害とともに早期から目立つ。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第106回医師国家試験問題および正答
- MSD Manual Professional Edition: Dementia
- MSD Manual Professional Edition: Alzheimer Disease
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。