第106回医師国家試験 G17(2012年)
正答:e
問題
母乳について正しいのはどれか。
a.ビタミンKが豊富である。
b.産後の月経発来を促進する。
c.産褥1か月までは初乳と呼ぶ。
d.プロラクチンは射乳を促進する。
e.黄体ホルモンは乳汁分泌を抑制する。
正答の理由
妊娠中は胎盤由来の高濃度のプロゲステロン(黄体ホルモン)が乳汁分泌の開始を抑えており、分娩で胎盤が娩出されてプロゲステロンが急に低下することが本格的な乳汁分泌開始(分泌活性化)の引き金になります。このため胎盤の一部が遺残すると乳汁分泌の開始が妨げられることがあります。プロゲステロンは乳糖やカゼインなどの合成も抑制すると報告されています。
各選択肢の検討
a.ビタミンKが豊富である。 誤り。ヒト母乳のビタミンK含有量は約2.5 μg/Lと少なく(牛乳は約5000 μg/L)、母乳栄養児はビタミンK欠乏性出血症を起こしやすいため、新生児・乳児にビタミンKを予防投与します。
b.産後の月経発来を促進する。 誤り。授乳中は排卵と月経の再開が遅れる傾向があり、授乳している女性では通常分娩後6か月近くまで遅れます(授乳性無月経)。ただし早期に排卵する例もあるため避妊指導は必要です。
c.産褥1か月までは初乳と呼ぶ。 誤り。初乳は乳汁産生が確立する前(初産婦で分娩後72〜96時間ほど)に最初に分泌される、抗体やリンパ球を多く含む薄黄色の乳汁で、分娩後数日間のものを指します。産褥1か月までを初乳とは呼びません。
d.プロラクチンは射乳を促進する。 誤り。射乳(乳汁の排出)を起こすのは下垂体後葉から分泌されるオキシトシンです。プロラクチンは下垂体前葉ホルモンで、乳汁の産生(分泌)を促します。
e.黄体ホルモンは乳汁分泌を抑制する。 正しい。黄体ホルモン(プロゲステロン)は乳汁分泌を抑制し、分娩後のその急低下が乳汁分泌開始の引き金になります。
覚えるポイント
乳汁の産生=プロラクチン、射乳=オキシトシン、妊娠中の分泌抑制=プロゲステロン。母乳はビタミンKが少ない。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第106回医師国家試験問題および正答
- ビタミンK欠乏症(MSDマニュアル プロフェッショナル版)
- 産褥の管理(MSDマニュアル プロフェッショナル版)
- 母乳哺育(MSDマニュアル プロフェッショナル版)
- 内分泌系の概要(MSDマニュアル プロフェッショナル版)
- 妊娠の生理(MSDマニュアル プロフェッショナル版)
- Normal Human Lactation: closing the gap(Boss M, Gardner H, Hartmann P. F1000Research 2018、Europe PMC)
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。