うつ病の微小妄想(貧困妄想)|第106回医師国家試験G1

第106回医師国家試験 G1(2012年)

正答:d

問題

うつ病の患者の訴えで典型的と考えられるのはどれか。

a.「妻が浮気をしている」

b.「食事に毒が入っている」

c.「いつも誰かに尾行されている」

d.「お金がなくてどうにもなりません」

e.「周囲の雰囲気が変わってしまった」

正答の理由

うつ病では自己評価が過度に低下し、罪業(罪責)・貧困・心気を主題とする妄想が生じやすく、これらを総称して微小妄想と呼びます。誇大妄想とは対極の主題です。「お金がなくてどうにもなりません」は、実際の経済状態に見合わない困窮を確信する貧困妄想にあたり、日本精神病理学会の用語集では、貧困を主題とする不安・妄想は内因性うつ病以外には原則として生じず、うつ病に特異的とさえ考えられると紹介されています。ほかの肢は被害妄想(被毒・追跡)、嫉妬妄想、妄想気分で、統合失調症などを先に考える訴えです。精神病性の特徴を伴ううつ病でも迫害的な内容が出ることはありますが、「典型的」なのは自責・貧困・心気の主題です。

各選択肢の検討

a.「妻が浮気をしている」 誤り。配偶者の不貞を確信する嫉妬妄想です。アルコール使用障害、認知症、統合失調症、妄想症など多様な疾患でみられ、うつ病に典型的な主題ではありません。

b.「食事に毒が入っている」 誤り。食物に毒を入れられたとする被毒妄想は、他者の悪意を主題とする広義の被害妄想に含まれます。被害妄想は統合失調症で最もよくみられる主題で、自分を責めるうつ病の妄想とは向きが逆です。

c.「いつも誰かに尾行されている」 誤り。誰かにつけ狙われているとする追跡妄想も広義の被害妄想で、統合失調症などで典型的です。

d.「お金がなくてどうにもなりません」 正しい。経済的破滅を確信する貧困妄想で、罪業・心気と並ぶうつ病の微小妄想です。

e.「周囲の雰囲気が変わってしまった」 誤り。「何かが起きている」という不気味な雰囲気の変化を感じる体験は妄想気分で、統合失調症の急性期に最初にみられる症状とされます。

覚えるポイント

うつ病の妄想は微小妄想(罪業・貧困・心気)。被害妄想・妄想気分は統合失調症、嫉妬妄想はアルコール使用障害や認知症などを考える。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

第106回の一覧へ戻る

タイトルとURLをコピーしました