第106回医師国家試験 F22(2012年)
正答:a
問題
32歳の男性。頸髄損傷患者。手関節の背屈はできないが、肘関節の屈曲は可能である。頸椎MRIでは脊髄の連続性が絶たれている。
この患者で可能と考えられるのはどれか。
a.肩甲骨の挙上
b.肘関節の伸展
c.手関節の屈曲
d.手指の伸展
e.股関節の屈曲
正答の理由
肘関節の屈曲(上腕二頭筋など、主にC5)はできるが、手関節の背屈(手関節伸筋群、主にC6)はできず、MRIで脊髄の連続性が断たれていることから、C5髄節までが機能残存する完全頸髄損傷です。損傷高位より尾側の髄節が支配する運動はすべて失われます。肩甲骨の挙上を担う僧帽筋上部は副神経(第XI脳神経)と上位頸髄(C3〜C4)に支配されるため保たれます。
各選択肢の検討
a.正しい。僧帽筋による肩甲骨の挙上(肩をすくめる動作)は副神経と上位頸髄の支配で、C5残存の損傷では保たれます。
b.誤り。肘関節の伸展は上腕三頭筋(主にC7)の作用で、C6以下が機能しない本例では不可能です。
c.誤り。国際基準(ISNCSCI)では手関節の屈曲はC6髄節に割り当てられており、同じC6の手関節背屈ができない本例では行えません。
d.誤り。手指の伸展は主にC7髄節(橈骨神経支配の総指伸筋など)の支配で、本例では不可能です。
e.誤り。股関節の屈曲(腸腰筋、主にL2)は損傷部位よりはるかに尾側の支配で、脊髄が離断している完全損傷では随意運動はできません。
覚えるポイント
頸髄損傷の残存髄節は筋で判定:肘屈曲C5、手関節背屈C6、肘伸展C7、手指屈曲C8。肩をすくめる動作は副神経(XI)で保たれる。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第106回医師国家試験問題および正答
- MSD Manual Professional Edition: Overview of Spinal Cord Disorders
- ASIA/ISCoS: International Standards for Neurological Classification of Spinal Cord Injury Worksheet (2019)
- MSD Manual Professional Edition: How To Assess the Cranial Nerves
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。