第106回医師国家試験 F16(2012年)
正答:e
問題
63歳の男性。咳と発熱とを主訴に来院した。黄色の痰も伴っている。5年前にアルコール性肝硬変とアルコール依存症との診断を受け、3回の入院歴がある。1人暮らしである。体温38.2℃。SpO2 93%(room air)。左の前胸部と背部下方とにcoarse cracklesを聴取する。胸部エックス線写真で左下肺野に浸潤影を認める。肺炎と診断し、入院することになった。
これから収集する情報のうち、安全管理の観点から最も重要性が高いのはどれか。
a.職業歴
b.喫煙歴
c.家族歴
d.海外渡航歴
e.最終飲酒日時
正答の理由
アルコール依存症の患者が入院すると、飲酒が急に途絶えることで離脱症状が起こり得ます。離脱けいれんは断酒後おおむね6〜48時間、振戦せん妄は48〜72時間ごろに始まるため、最終飲酒日時が分かれば「いつ頃危険な時期が来るか」を予測し、ベンゾジアゼピン系薬による予防・治療や観察体制を前もって整えられます。せん妄による転倒・転落、点滴の自己抜去、興奮などを防ぐという安全管理の観点で、最も優先して聴取すべき情報です。
各選択肢の検討
a.誤り。職業歴は塵肺や過敏性肺炎など職業性肺疾患の診断に役立ちますが、細菌性肺炎で入院する本例の入院中の事故や急変を防ぐ情報ではありません。
b.誤り。喫煙歴はCOPDや肺癌の危険因子評価に必要ですが、入院直後の安全管理(離脱症状・せん妄対策)には直結しません。
c.誤り。家族歴は遺伝性疾患や家族内の結核などの把握に使いますが、本例の入院中の危険を予測する情報としての優先度は低いです。
d.誤り。海外渡航歴は輸入感染症を疑う場面では重要ですが、本例は膿性痰と左下肺野の浸潤影を伴う典型的な市中肺炎像で、入院後に予想される最大の危険はアルコール離脱です。
e.正しい。最終飲酒日時から離脱けいれん・振戦せん妄が起こる時期を見積もり、ベンゾジアゼピン系薬の投与や転倒・自己抜去への備えを計画できます。
覚えるポイント
アルコール依存症患者の入院時は最終飲酒日時を確認し、離脱けいれん(6〜48時間)・振戦せん妄(48〜72時間)に備える。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。