第106回医師国家試験 E63(2012年)
正答:d
問題
次の文を読み、61〜63の問いに答えよ。
45歳の男性。爆発事故現場で受傷したため搬入された。
現病歴:爆発によって崩落した建物の下敷きになり、4時間後に救出された。
現症:意識は清明。体温37.6℃。脈拍108/分、整。血圧98/62 mmHg。呼吸数24/分。SpO2 100%(4 l/分酸素投与下)。両下肢と殿部とを中心に広範囲に点状出血を認める。右下肢に運動麻痺と知覚障害とを認める。救急室の看護師から、尿が赤いとの報告を受けた。
損傷の種類はどれか。
a.爆傷
b.脊髄損傷
c.開放性損傷
d.挫滅〈圧挫〉損傷
e.デグロービング損傷
正答の理由
爆発事故ではありますが、本例の損傷は崩落した建物の下敷きになって4時間圧迫されたことによるもので、両下肢・殿部の点状出血、右下肢の運動麻痺・知覚障害、赤い尿(ミオグロビン尿)から、長時間の圧迫で筋が壊れた挫滅〈圧挫〉損傷(クラッシュ症候群)です。爆発による外傷の分類では、爆風そのもの(衝撃波)による一次損傷と、瓦礫の下敷きによる圧挫損傷(一次〜三次以外の機序)は区別されます。
各選択肢の検討
a.爆傷。誤り。狭義の爆傷(一次爆傷)は爆風の衝撃波による損傷で、肺・鼓膜・中耳・腸管など含気臓器が障害されます。本例の所見は瓦礫による長時間の圧迫で説明されます。
b.脊髄損傷。誤り。麻痺と知覚障害は右下肢に限られ、点状出血や赤い尿を伴う圧迫部位の筋・神経障害で説明できます。脊髄損傷を示す両側性の麻痺や感覚レベル、膀胱直腸障害の記載はありません。
c.開放性損傷。誤り。皮膚が破綻して深部組織が外界と交通する損傷ですが、本例の皮膚所見は点状出血のみで開放創の記載はありません。
d.挫滅〈圧挫〉損傷。正しい。重量物による長時間の圧迫で骨格筋が虚血・崩壊し、救出後にミオグロビン尿や高カリウム血症を来すクラッシュ症候群の病態です。
e.デグロービング損傷。誤り。回転するローラーなどに巻き込まれて皮膚・皮下組織が筋膜から手袋を脱ぐように剥がれる損傷で、本例の所見とは異なります。
覚えるポイント
爆発事故でも、瓦礫の下敷きによる長時間圧迫は挫滅〈圧挫〉損傷(クラッシュ症候群)。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第106回医師国家試験問題および正答
- MSD Manual Professional Edition: Table「Mechanisms of Blast Injury」
- MSD Manual Professional Edition: Rhabdomyolysis
- AAST Critical Care Committee: Rhabdomyolysis clinical consensus document(2022)
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。