非定型縊頸の溢血点と頸部血管閉塞|第106回医師国家試験E13

第106回医師国家試験 E13(2012年)

正答:d

問題

非定型的縊頸死体の左眼の写真(別冊No. 2)を別に示す。

左下眼瞼の所見から、死亡時に閉塞されていなかったと判断できるのはどれか。

a.外頸動脈

b.浅側頭動脈

c.中硬膜動脈

d.椎骨動脈

e.内頸動脈

上下の眼瞼を鑷子で翻転した左眼の写真。下眼瞼結膜から周囲の眼瞼皮膚にかけて、多数の点状の赤い出血(溢血点)が散在している。
別冊No. 2(E問題13)非定型的縊頸死体の左眼 / 出典:厚生労働省・第106回E別冊(原本の該当ページ)

正答の理由

下眼瞼結膜の溢血点は、頸部の静脈が圧迫されて頭部からの血液の戻りが妨げられる一方、動脈血の流入が続いて頭部の静脈圧が上がり、細い血管が破綻して生じます。定型的縊頸では体重で索条が頸部を強く圧迫し、頸動脈とともに椎骨動脈も閉塞して頭部への流入が止まるため顔面は蒼白で溢血点は乏しくなります。非定型的縊頸では、頸椎の横突孔内を通るため圧迫されにくい椎骨動脈からの流入が続き、うっ血と溢血点が生じます。写真の溢血点から、少なくとも椎骨動脈は閉塞されていなかったと判断できます。

画像の見方

別冊No. 2では鑷子で上下眼瞼を翻転しており、左下眼瞼結膜とその周囲の皮膚に小さな点状出血(溢血点)が多数みられます。上眼瞼結膜はうっ血して赤みがあります。

各選択肢の検討

a.外頸動脈。誤り。総頸動脈から分かれて頸部を上行する動脈で、頸動脈は椎骨動脈(閉塞に約30 kgの荷重が必要)より低い圧で閉塞されるため、溢血点があっても開存していたとは判断できません。

b.浅側頭動脈。誤り。外頸動脈の終枝で、頸部で外頸動脈が圧迫されれば血流が途絶えます。溢血点はこの動脈の開存を示す根拠になりません。

c.中硬膜動脈。誤り。外頸動脈の終枝である顎動脈の枝で、頭蓋内の硬膜を養う動脈です。眼瞼の溢血点の成因とは直接関係せず、開存の判断材料になりません。

d.椎骨動脈。正しい。椎骨動脈は頸椎の横突孔(通常C6〜C3)内を上行し、閉塞には約30 kgの荷重が必要とされ圧迫を受けにくい動脈です。静脈還流が阻まれたまま椎骨動脈から頭部へ血液が流入し続けたことで、うっ血と溢血点が生じたと考えられます。

e.内頸動脈。誤り。総頸動脈から分かれて頸部を上行し、頸動脈は椎骨動脈より低い圧で閉塞されます。溢血点は椎骨動脈経由の流入が続けば生じるため、内頸動脈が開存していたとは断定できません。

覚えるポイント

縊頸の溢血点=静脈閉塞+動脈流入の持続。非定型縊頸では椎骨動脈が開存し顔面うっ血・溢血点が出やすい。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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