第106回医師国家試験 E9(2012年)
正答:d
問題
ある検査に用いる検体の写真(別冊No. 1)を別に示す。
この検査の対象疾患に含まれるのはどれか。
a.Rh不適合
b.帽状腱膜下血腫
c.ビタミンK欠乏症
d.ホモシスチン尿症
e.特発性血小板減少性紫斑病〈ITP〉

正答の理由
写真は哺乳開始日・採血日・抗生剤使用などを記入する新生児のろ紙血採血用紙で、新生児マススクリーニング(先天性代謝異常症等検査)の検体です。この検査は早期治療で知的障害などを防げる先天性の内分泌疾患と代謝異常症を対象とします。わが国では1977年にフェニルケトン尿症・メープルシロップ尿症・ホモシスチン尿症・ヒスチジン血症・ガラクトース血症の5疾患で始まり、1979年にクレチン症(先天性甲状腺機能低下症)、1989年に先天性副腎過形成症が加わり、1992年にヒスチジン血症が外されました。ホモシスチン尿症は開始時から一貫して対象で、出題当時も現在(計20疾患)も含まれます。ほかの選択肢は新生児期の出血・溶血性疾患で、この検査の対象ではありません。
画像の見方
別冊No. 1は、点線の円内に血液を染み込ませた血斑4つを持つろ紙と、哺乳開始日・採血日・在胎週数・出生体重・抗生剤使用・哺乳状態などの記入欄、「再採血必要」「精密検査必要」の判定欄が一体になった用紙です。新生児の乾燥ろ紙血を用いる新生児マススクリーニング(先天性代謝異常等検査)の採血用紙と判断しました(検査名は原本に記載がなく、用紙の様式からの判断です)。
各選択肢の検討
a.Rh不適合。誤り。母児間の血液型不適合による溶血性疾患で、母体の抗体検査や出生後の黄疸・貧血、直接クームス試験で評価します。ろ紙血マススクリーニングの対象ではありません。
b.帽状腱膜下血腫。誤り。分娩時の外力(吸引分娩など)による頭部の出血で、頭囲の増大や貧血を診察と画像で評価します。スクリーニング対象ではありません。
c.ビタミンK欠乏症。誤り。新生児出血症の予防は出生後のビタミンK₂シロップ投与で行い、ろ紙血のマススクリーニングでは検査しません。
d.ホモシスチン尿症。正しい。メチオニン代謝の途中のホモシステインを処理できないアミノ酸代謝異常症で、新生児マススクリーニングの対象疾患です。メチオニン除去ミルクによる早期治療で知的障害や血栓症を予防します。
e.特発性血小板減少性紫斑病〈ITP〉。誤り。後天性の自己免疫性血小板減少症で、先天性代謝異常等の検査の対象ではありません。
覚えるポイント
新生児マススクリーニングはろ紙血で先天性甲状腺機能低下症・先天性副腎過形成症・アミノ酸代謝異常症(ホモシスチン尿症など)などを調べる。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第106回医師国家試験問題および正答
- 新生児マススクリーニングについて(先天性代謝異常症等検査)(日本マススクリーニング学会)
- 厚生省心身障害研究「マス・スクリーニングシステムの評価方法に関する研究」総括(国立保健医療科学院 収載)
- 厚生省心身障害研究 報告書(1978年度)新生児マス・スクリーニング研究の研究目的(国立保健医療科学院 収載)
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。