第106回医師国家試験 C22(2012年)
正答:d
問題
45歳の女性。職場の健康診断で胸部エックス線写真の異常陰影を指摘され、精査のために入院した。入院当日に、個室となっている面談室において、担当の研修医が病歴聴取を行うこととなった。その際の会話を示す。
研修医 「これまでに大きなご病気をされたことがありますか」
患者 「特にありません」
研修医 「それでは、ご家族の健康状態はいかがですか」
患者 「母は元気ですが、父は…父は、胃癌で2か月前に亡くなって…」
研修医 「わかりました。それでは、ご兄弟についてはいかがですか」
患者 「…はい。健在です。病気のことは特に聞いていません」
会話の間、この研修医は緊張気味で、メモを注視しており、早口で話した。
研修医の言動で問題があるのはどれか。
a.専門用語を使っている。
b.質問が順序立っていない。
c.評価的態度をとっている。
d.患者の感情面に対応していない。
e.患者のプライバシーを守っていない。
正答の理由
患者は自身も胸部異常陰影で精査入院した直後で、父親を2か月前に胃癌で亡くしたことを言葉に詰まりながら話しています。これは強い感情が表出されたサイン(感情の手がかり)であり、医師はいったん質問を止めて「それはおつらかったですね」などと気持ちを受け止める共感的な応答をするべきです。この研修医はメモを見たまま「わかりました」と次の質問へ進み、患者の感情に応えていません。がん診療のコミュニケーションでも、感情への応答は情報交換と並ぶ中核的な機能とされています。
各選択肢の検討
a.専門用語を使っている。誤り。会話に出てくる言葉は「大きなご病気」「健康状態」など平易な表現で、専門用語は使われていません。
b.質問が順序立っていない。誤り。既往歴→家族歴(両親→兄弟)という順序で聴取しており、質問の順序は整理されています。
c.評価的態度をとっている。誤り。研修医は患者の発言を良い・悪いと評価したり批判したりしておらず、評価的態度はみられません。
d.患者の感情面に対応していない。正しい。父親の死を語る患者の感情のサインを受け止めず、「わかりました」とすぐ次の質問に移っています。メモの注視や早口も、感情に配慮していない態度を強めています。
e.患者のプライバシーを守っていない。誤り。面接は個室の面談室で行われており、プライバシーへの配慮はされています。
覚えるポイント
医療面接で患者が感情を表出したら、質問を止めて共感的に受け止める(感情への応答)。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。