第106回医師国家試験 B19(2012年)
正答:c
問題
肝細胞癌に対する動脈塞栓術の適応となるのはどれか。
a.難治性腹水がある。
b.門脈本幹に腫瘍塞栓を認める。
c.肝両葉に腫瘍が多発している。
d.PT 25%(基準80〜120)である。
e.総ビリルビン 6.3 mg/dlである。
正答の理由
肝動脈化学塞栓療法(TACE)は、肝機能が保たれ(Child-Pugh A〜B)、脈管侵襲や肝外転移のない、切除やラジオ波焼灼の適応にならない多発肝細胞癌(BCLC中間期)に対する第一選択の治療です。肝両葉に多発する腫瘍は手術や局所焼灼が難しく、TACEの典型的な適応です。
各選択肢の検討
a.難治性腹水がある。誤り。難治性腹水は非代償性肝硬変(Child-Pugh C相当)を示し、塞栓による肝機能悪化の危険が高いため適応外です。
b.門脈本幹に腫瘍塞栓を認める。誤り。門脈本幹が閉塞していると肝実質は肝動脈血流に依存するため、動脈を塞栓すると広範な肝梗塞・肝不全を起こします。完全門脈閉塞は禁忌とされます。
c.肝両葉に腫瘍が多発している。正しい(これが正答)。切除不能の多発結節(脈管侵襲・肝外病変なし)はTACEの第一選択の対象です。
d.PT 25%(基準80〜120)である。誤り。著明な凝固能低下は肝合成能の高度低下(肝不全)を示し、補正できない凝固障害としても禁忌に当たります。
e.総ビリルビン 6.3 mg/dlである。誤り。総ビリルビン>3 mg/dLは肝不全を示しTACEの禁忌とされます。
覚えるポイント
TACEの適応=肝機能が保たれた切除・焼灼不能の多発HCC。禁忌=Child-Pugh C(難治性腹水・高ビリルビン・凝固障害)、門脈本幹閉塞、肝外転移。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第106回医師国家試験問題および正答
- Transarterial Chemoembolization for Hepatocellular Carcinoma: Why, When, How? (J Pers Med 2022)
- MSD Manual Professional Edition: Hepatocellular Carcinoma
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。