規則的な幅の狭いQRS頻拍の治療薬|第106回医師国家試験A58

第106回医師国家試験 A58(2012年)

正答:c・d

問題

72 歳の男性。動悸を主訴に来院した。10 年前から高血圧を指摘されていたが、自覚症状がないため受診しなかった。2 日前から感冒症状があった。6 時間前から動悸を自覚し、改善しないため受診した。呼吸困難やめまいはないという。脈拍 144/分、整。血圧 120/76 mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。心電図(別冊 No. 29)を別に示す。

治療薬として適切なのはどれか。2 つ選べ。

a.アトロピン

b.ニトログリセリン

c.プロプラノロール

d.ベラパミル

e.リドカイン

12誘導心電図(原本では横向き掲載を正立に回転)。心拍数約140〜150/分の規則的な幅の狭いQRS頻拍で、下壁誘導ではQRSの間に陰性の振れがみられる
別冊No.29 / 出典:厚生労働省・第106回A別冊(原本の該当ページ)

正答の理由

心電図は心拍数約140〜150/分の規則的な幅の狭いQRS頻拍で、Ⅱ・Ⅲ・aVF誘導ではQRSの間に心房波を疑う陰性の振れがみられます。発作性上室頻拍、または心拍数がほぼ150/分であることから2:1伝導の心房粗動が考えられます。血圧は保たれ、呼吸困難やめまいもない安定した頻拍であり、房室結節の伝導を抑えるβ遮断薬(プロプラノロール)や非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬(ベラパミル)で停止または心拍数の調節を図ります(実際の静注ではどちらか一方を選び、両者の静注併用は高度の徐脈・低血圧を招くおそれがあるため避けます)。

画像の見方

規則的なRR間隔で幅の狭いQRSが約140〜150/分で続き、明らかな洞性P波は同定しにくい。Ⅱ・Ⅲ・aVFではQRSの間に心房波を疑う陰性の振れがある。原本は90度回転して掲載されており、正立に回転して示した。

各選択肢の検討

a.誤り。アトロピンは迷走神経を遮断して房室伝導を促進する徐脈の治療薬です。頻拍を悪化させ、心房粗動では房室結節の不応期が短縮して1:1伝導となり心拍数が逆に増えるおそれがあります。

b.誤り。ニトログリセリンは狭心症や心不全の治療に用いる血管拡張薬で、上室性頻拍を停止させたり心拍数を下げたりする作用はありません。

c.正しい。β遮断薬は房室結節の伝導を抑え、房室結節を回路に含む上室頻拍の停止や心房粗動の心拍数調節に用います。

d.正しい。ベラパミルは非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬で、房室結節の伝導を抑えて幅の狭いQRSの上室頻拍を停止させ、心房粗動では心拍数を調節します。

e.誤り。リドカインはⅠb群抗不整脈薬で心室性不整脈(心室期外収縮・心室頻拍・心室細動)の抑制に用い、心房組織への作用はごくわずかです。上室頻拍や心房粗動の治療薬にはなりません。

覚えるポイント

血行動態が安定した規則的な幅の狭いQRS頻拍には、迷走神経刺激・ATP(アデノシン)に加え、ベラパミルやβ遮断薬で房室結節伝導を抑える。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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