第106回医師国家試験 A37(2012年)
正答:d
問題
75歳の女性。階段を昇ったときに自覚する前胸部の違和感を主訴に来院した。症状は約1年前からあり、頻度や強さに変化はないという。身体診察所見に異常を認めない。胸部エックス線写真と安静時の12誘導心電図とに異常を認めない。アデノシン負荷201Tl心筋血流SPECTの左室短軸像(別冊No. 14A、B)を別に示す。
原因として考えられるのはどれか。
a.冠攣縮
b.心筋炎
c.左室肥大
d.冠動脈狭窄
e.陳旧性心筋梗塞


正答の理由
階段昇降という労作で起こり、1年間頻度や強さが変わらない前胸部違和感は安定労作性狭心症の経過です。アデノシン負荷時の初期像(No. 14A)では左室短軸のリングの一部(上方〜右下方)で集積が相対的に低下し、遅延像(No. 14B)ではほぼ全周均一に集積が回復しています(再分布)。負荷時のみの可逆性の血流低下は、器質的な冠動脈狭窄による心筋虚血を示します。原本に方向表示はなく、短軸像を標準表示(上が前壁、左が中隔、右が側壁)とみなすと、前壁と下側壁寄りの虚血に相当します。
画像の見方
No. 14A(初期像・アデノシン負荷時)では、左室短軸のリングのうち左方〜下方は赤く強く集積し、右方の一部も保たれるが、上方と右下方は緑色で集積が相対的に低下している。No. 14B(遅延像)ではリング全周が赤〜桃色でほぼ均一に集積し、初期像の低下部が回復している(再分布)。原本に方向表示はなく、標準表示(上=前壁、左=中隔、右=側壁、下=下壁)を前提とした読み。
各選択肢の検討
a.誤り。冠攣縮性狭心症は夜間〜早朝の安静時に発作が起こるのが典型で、労作で再現性よく起こる本例の症状とは異なります。
b.誤り。心筋炎は感冒様症状に続く心不全や不整脈を起こし、心電図変化や心筋逸脱酵素の上昇を伴います。1年来安定した労作時症状とは合いません。
c.誤り。左室肥大では壁全体が厚く描出され、心電図でも高電位やST-T変化がみられます。本例の安静時心電図は正常で、負荷時だけの局所的な集積低下は説明できません。
d.正しい。負荷時に集積が低下し遅延像で再分布する可逆性欠損は、冠動脈狭窄による労作性の心筋虚血を示します。
e.誤り。陳旧性心筋梗塞の瘢痕は負荷時・遅延像ともに集積が欠損したままの固定性欠損となり、遅延像で再分布しません。
覚えるポイント
201Tl負荷SPECTで負荷時欠損→遅延像で再分布=可逆性虚血(冠動脈狭窄)。欠損が残れば固定性欠損=梗塞(瘢痕)。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。