門脈大循環シャントと肝性脳症|第104回医師国家試験I79

第104回医師国家試験 I79(2010年)

正答:d

問題

63歳の男性。意識障害のため搬入された。10年前から下腿浮腫を認める。意識は混濁。腹部造影CT(別冊No. 25)を別に示す。

意識障害の原因として最も考えられるのはどれか。

a.高血糖

b.高カリウム血症

c.高アミラーゼ血症

d.高アンモニア血症

e.高カルシウム血症

f.高ナトリウム血症

g.高ビリルビン血症

別冊No.25 腹部造影CT(上腹部横断像)。脾腫があり、脾門部から左後腹膜にかけて太く蛇行した強く造影される血管が多数みられる。
別冊No.25 / 出典:厚生労働省・第104回I別冊(原本の該当ページ)

正答の理由

造影CTで脾腫と、左上腹部から後腹膜に太く蛇行する側副血行路を認め、門脈圧亢進に伴う門脈大循環シャントが考えられます。腸管から吸収された物質が肝を経由せず全身循環に入り、脳に毒性を及ぼす門脈大循環性脳症で、アンモニアが重要な原因物質です。10年来の下腿浮腫は慢性肝疾患を疑う手がかりになりえますが、非特異的です。本文にアンモニア値の記載はなく、機序からの判断です。脳症を起こす物質はアンモニアだけとは限らず、診断は症状と背景を合わせて行います。

画像の見方

脾腫を認め、脾門部から左後腹膜にかけて太く蛇行する血管が強く造影され、脾腎シャントなどの側副血行路を考える。血流の方向や分枝の同定には連続断面が必要で、本解説は1断面からの読影である。

各選択肢の検討

a.高血糖。誤り。糖尿病ケトアシドーシスなどの高血糖緊急症では意識障害が起こりますが、本文に糖尿病の情報はなく、本例のCTの異常(太い側副血行路と脾腫)も説明できません。

b.高カリウム血症。誤り。高カリウム血症の症状は主に筋力低下と心毒性で、重症では致死性不整脈に至ります。シャントの所見からも導かれません。

c.高アミラーゼ血症。誤り。血清アミラーゼは急性膵炎の診断に用いる検査値です。その上昇自体を意識障害の原因とは説明できず、CTでも急性膵炎を疑う膵の腫大や周囲の滲出は目立ちません。

d.高アンモニア血症。正しい。シャントにより肝で処理されないアンモニアが全身に入ると、錯乱、羽ばたき振戦、昏睡をきたします。本例のCT所見で最も説明がつきます。

e.高カルシウム血症。誤り。高カルシウム血症も錯乱や昏睡を起こしますが、主な原因は副甲状腺機能亢進症、ビタミンD中毒、悪性腫瘍で、本例のCTの異常とは結びつきません。

f.高ナトリウム血症。誤り。高ナトリウム血症も錯乱や昏睡を起こしますが、主に水分の喪失によるもので、10年来の下腿浮腫とCTの血管所見を説明できません。

g.高ビリルビン血症。誤り。ビリルビンが上昇すれば黄疸になりますが、本文に黄疸の記載はありません。確認した資料で脳症の原因として挙げられているのはアンモニアなどで、ビリルビンは挙げられていません。

覚えるポイント

意識障害+脾腫+太い門脈大循環シャントは門脈大循環性脳症。アンモニアが主な原因物質の一つ。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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