第104回医師国家試験 I74(2010年)
正答:a
問題
28歳の女性。仕事が全く手につかないことを主訴に来院した。2か月前に家族でドライブ中に交通事故に遭い、腹部に重症を負ったが頭部打撲は免れた。両親は即死した。身体状態は改善したが、1か月前から日中覚醒時に事故の光景が頻回に目に浮かび、不安におののくようになった。
この病態で起こりやすいのはどれか。
a.悪夢
b.過眠
c.幻覚
d.夜驚
e.既視感
正答の理由
生命を脅かす事故と両親の死を体験し、事故の光景が繰り返しよみがえって強い不安が続き、社会機能も障害されています。心的外傷後ストレス障害(PTSD)です。再体験(侵入)症状は覚醒時のフラッシュバックだけでなく、出来事に関する苦痛な夢としても現れるので、悪夢が起こりやすいです。
各選択肢の検討
a.悪夢。正しい。侵入症状の一つで、出来事を再現する苦痛な夢を繰り返します。診断基準にも含まれます。
b.過眠。誤り。確認した資料でPTSDの睡眠の問題として取り上げられているのは悪夢と不眠で、過眠は主要な症状に挙げられていません。
c.幻覚。誤り。幻覚は他の人には知覚されない誤った知覚で、統合失調症などの症状です。本例の「事故の光景が目に浮かぶ」のは実際の体験の記憶が侵入的によみがえるフラッシュバックとして説明できます。
d.夜驚。誤り。夜驚はノンレム睡眠(N3)から部分的に覚醒して起こる睡眠時随伴症で、小児に多く、悪夢とは別の現象です。
e.既視感。誤り。既視感は初めての場面を以前経験したように感じる現象で、焦点発作の認知症状としても知られます。本例でみられるのは実際にあった外傷的記憶の再体験で、性質が異なります。
覚えるポイント
PTSDの侵入症状はフラッシュバックと悪夢。夜驚はノンレム睡眠の現象で悪夢とは別物。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第104回医師国家試験問題および正答
- Posttraumatic Stress Disorder (PTSD) (MSD Manual Professional Edition)
- Parasomnias (MSD Manual Professional Edition)
- Schizophrenia (MSD Manual Professional Edition)
- Seizure Disorders (MSD Manual Professional Edition)
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。