第104回医師国家試験 I70(2010年)
正答:e
問題
40歳の男性。1年前からのふらつきと歩行時の動揺視とを主訴に来院した。両側の耳鳴りがある。鼓膜に異常を認めない。温度眼振検査で両側の反応低下を認める。オージオグラム(別冊No. 22)を別に示す。
考えられるのはどれか。
a.Ménière病
b.外リンパ瘻
c.前庭神経炎
d.突発性難聴
e.中毒性平衡障害

正答の理由
慢性のふらつきと歩行時の動揺視は、両側前庭機能の低下でみられる症状です。温度眼振検査の両側低下と、両側対称の高音漸傾型感音難聴を合わせると、両耳の内耳が同時に障害される耳毒性薬物による平衡障害が最も考えられます。本文に薬剤歴の記載はありませんが、アミノ配糖体(ストレプトマイシンなど)の使用歴を確認すべき所見です。
画像の見方
左右の気導閾値は1,000 Hzまでほぼ20〜30 dB、2,000 Hzで約45〜50 dB、4,000 Hzで約75〜80 dB、8,000 Hzで約85〜90 dBと高音域ほど低下する。骨導閾値は2,000 Hzまで気導に沿い、低〜中音域に気骨導差はない。4,000 Hzの骨導は約60 dBで15〜20 dBほど差があるが、全体として両側対称の高音漸傾型感音難聴と読む。
各選択肢の検討
a.Ménière病。誤り。回転性めまいの発作が20分〜12時間続いて繰り返し、発作時に一側の耳鳴・難聴・耳閉感を伴う疾患です。本例は発作性ではなく両側性です。
b.外リンパ瘻。誤り。外傷などを契機に内耳の瘻孔が生じる病態で、原因となる出来事が手がかりになります。本例に外傷の情報はなく、1年の慢性経過で両側対称です。
c.前庭神経炎。誤り。突然の激しい回転性めまいが最大1週間ほど続いて徐々に軽快し、難聴を伴いません。本例は難聴があり、経過も異なります。
d.突発性難聴。誤り。急に起こる感音難聴で多くは一側性です。本例のふらつきは1年にわたり、難聴も両側対称で経過に合いません。
e.中毒性平衡障害。正しい。アミノ配糖体は両側の聴覚・前庭機能を障害することがあります。前庭感覚の喪失は暗所の歩行困難と歩行に伴う動揺視をきたします。
覚えるポイント
両側の温度反応低下+動揺視+両側対称の高音障害型難聴では、耳毒性薬物による障害を疑い薬剤歴を確認する。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第104回医師国家試験問題および正答
- Dizziness and Vertigo (MSD Manual Professional Edition)
- Drug-Induced Ototoxicity (MSD Manual Professional Edition)
- Sudden Hearing Loss (MSD Manual Professional Edition)
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。