第104回医師国家試験 I30(2010年)
正答:c
問題
冠動脈バイパス術の適応でないのはどれか。
a.急性冠症候群
b.冠動脈3枝病変
c.冠攣縮性狭心症
d.左冠動脈主幹部の75 % 狭窄
e.経皮的冠動脈インターベンション〈PCI〉後の再狭窄
正答の理由
冠攣縮性狭心症の治療は禁煙などの生活習慣の是正とカルシウム拮抗薬・硝酸薬です。試験前に公表された日本循環器学会の指針(2008年)は、有意な器質的狭窄を伴わない例では冠動脈バイパス術の効果は不良で推奨されないとしています。器質的狭窄に対する血行再建であるほかの肢とは異なります。a・b・dの記述は、試験時に公表されていた資料(2004年の米国指針、2008年の日本の急性心筋梗塞指針)と試験後の2011年の日本の指針を分けて示します。
各選択肢の検討
a.急性冠症候群。適応となり得る。試験前の資料でも、2004年の米国指針は左主幹部病変を伴う不安定狭心症・非ST上昇型梗塞をCABGの適応とし、2008年の日本のST上昇型梗塞指針は緊急CABGの適応を挙げています(試験後の2011年の日本の指針は、循環動態の維持と可能な限り早い血行再建を基本戦略としています)。発症早期は手術の侵襲が問題になることもあり、一律の適応ではありません。
b.冠動脈3枝病変。適応となる。2004年の米国指針は、3枝病変では症状が重く、左前下行枝の病変が近位で、左室機能が悪いほど外科治療の利益が大きいとしています。試験後の2011年の日本の指針にも、左主幹部病変を伴わない3枝病変でPCIはCABGより生命予後が不良で再血行再建も多いと記されています。
c.冠攣縮性狭心症。正しい(適応でない)。器質的狭窄のない部位に血行再建すると、攣縮で早期グラフト閉塞に陥ったり、吻合部より末梢にびまん性の攣縮が起きたりすることがあるため、適応は有意な器質的狭窄を伴う場合に限られます。
d.左冠動脈主幹部の75 % 狭窄。適応となる。2004年の米国指針は、有意な左主幹部狭窄を径50%を超える狭窄と定義し、CABGの適応としています。75%狭窄はこの基準を満たします。試験後の2011年の日本の指針でも、非保護左主幹部病変は原則CABGの適応です。
e.経皮的冠動脈インターベンション〈PCI〉後の再狭窄。適応となり得る。再狭窄は再血行再建を要する病態で、再PCIが選ばれることも多い一方、2004年の米国指針が紹介する試験ではPTCA群の31%が経過中にCABGを受けています。確認した資料には再狭窄だけを独立させた推奨項目はなく、解剖や全身状態で個別に判断するものとして理解します。
覚えるポイント
バイパスは器質的狭窄に対する治療。攣縮だけの冠攣縮性狭心症は薬物治療(Ca拮抗薬・硝酸薬)で、CABGは推奨されない。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第104回医師国家試験問題および正答
- 冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン(2006-2007年度合同研究班報告)日本循環器学会ほか(Internet Archive保存版)
- 虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン(2011年改訂版)日本循環器学会ほか(Internet Archive保存版)
- Vasospastic Angina – Cardiology – MSD Manual Professional Edition
- ACC/AHA 2004 Guideline Update for Coronary Artery Bypass Graft Surgery(Internet Archive保存版)
- 急性心筋梗塞(ST上昇型)の診療に関するガイドライン(2006-2007年度合同研究班報告)日本循環器学会ほか(Internet Archive保存版)
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。