第104回医師国家試験 G59(2010年)
正答:a
問題
84歳の男性。両足の痛みを主訴に来院した。
現病歴:3年前から長い距離を歩くと両足が痛くなって休憩するようになった。徐々に歩ける距離が短くなってきた。現在では、自宅から300mのところにある畑まで歩くのに2回休憩する。動悸や労作時の息切れは自覚しておらず、歩行以外で日常生活には支障を感じていない。
既往歴:50歳から糖尿病のため食事療法と経口糖尿病薬の服用とを行っている。
生活歴:喫煙は20本/日を20歳から30年間であったが、その後禁煙している。飲酒は機会飲酒。
現症:意識は清明。身長160cm、体重51kg。体温36.4℃。脈拍72/分、整。血圧154/82mmHg。眼瞼結膜に貧血を認める。眼球結膜に異常を認めない。心尖部で2/6度の収縮期雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。前脛骨部と足背部とに浮腫を認めない。
検査所見:尿所見:蛋白(-)、糖2+。血液所見:赤血球319万、Hb 7.1 g/dl、Ht 24%、白血球5,800、血小板14万。血液生化学所見:血糖134 mg/dl、HbA1c 6.8%、総蛋白6.2 g/dl、アルブミン3.7 g/dl、尿素窒素25 mg/dl、クレアチニン0.9 mg/dl、尿酸6.4 mg/dl、総コレステロール146 mg/dl、トリグリセリド66 mg/dl、総ビリルビン0.3 mg/dl、直接ビリルビン0.1 mg/dl、AST 17 IU/l、ALT 9 IU/l、LD 186 IU/l(基準176~353)、ALP 242 IU/l(基準115~359)、Na 139 mEq/l、K 4.4 mEq/l、Cl 107 mEq/l。CRP 1.3 mg/dl。下肢MRA(別冊No. 11A、B)と腰部単純MRI(別冊No. 11C、D)とを別に示す。
貧血の原因を探るために検査を施行したところ、腫瘍が同定された。病期を確定するために行った腹部単純CT(別冊No. 11E、F、G、H)とポジトロンエミッション断層撮影〈FDG-PET〉(別冊No. 11I)とを別に示す。
病変部位はどこか。
a.上行結腸
b.下行結腸
c.直腸
d.尿管
e.膀胱




正答の理由
FDG-PETでは右側腹部に塊状の強い集積があり、CTの右側腹部の腸管の腫瘤と一致します。よって上行結腸の病変です。右側結腸の癌は内腔が広いので閉塞が遅く、出血は潜在性で、高度の貧血による倦怠感のみが手がかりになることがあり、本例のHb 7.1 g/dlの貧血と合います。腎・尿管・膀胱はFDGの尿排泄で集積するので、悪性と間違えないようにします。
画像の見方
PETでは右側腹部に塊状の強い集積があり、CTの同じ高さで右側腹部の腸管(No. 11F)に軟部濃度の腫瘤を認めます。脳・腎盂尿管・膀胱の集積は生理的分布です。左側腹部の下行結腸や骨盤の直腸に腫瘤は目立ちません。
各選択肢の検討
a.上行結腸。正しい。右側腹部のPET集積とCTの腫瘤が一致します。潜在性出血による貧血という経過も右側結腸癌に典型的です。
b.下行結腸。誤り。PETの強い集積は患者の右側にあり、左側腹部の集積は弱く、CTでも下行結腸に腫瘤は目立ちません。
c.直腸。誤り。骨盤の断面(No. 11H)で直腸は便を含む程度で腫瘤は目立たず、PETの骨盤内の強い集積は膀胱に一致します。
d.尿管。誤り。尿管に沿った小さな集積は尿中FDGの生理的な描出です。水腎症や尿管の腫瘤は見られません。
e.膀胱。誤り。強い集積は尿中に排泄されたFDGによる生理的所見です。CTで膀胱内は均一な水濃度で、壁の腫瘤は目立ちません。
覚えるポイント
FDGは尿路に生理的に集積する。右側腹部の集積+CTの腫瘤+貧血なら上行結腸癌を考える。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第104回医師国家試験問題および正答
- Colorectal Cancer – Oncology – MSD Manual Professional Edition
- Colon Cancer Treatment (PDQ®)–Health Professional Version
- F-18 FDG PET/CT Imaging in Normal Variants, Pitfalls and Artifacts in the Abdomen and Pelvis (Front Nucl Med 2021)
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。