第104回医師国家試験 G14(2010年)
正答:c
問題
室温15℃前後の室内において死後約12時間経過した死体にみられるのはどれか。
a.瞳孔が透視できない。
b.腹壁の緑変が始まる。
c.関節の硬直が高度である。
d.体温が15℃に下がっている。
e.体位を変えると死斑が容易に転移する。
正答の理由
法医学の死後経過時間推定で用いられる基準では、死後硬直は7時間以内に始まり、死後10時間までに最大に達します。したがって死後約12時間では関節の硬直が高度です。公式正答はcです。ただし死体現象の時期は気温・体格・死因によって大きく変わるため、数字は目安で、複数の所見を合わせて判断します。
各選択肢の検討
a.瞳孔が透視できない。誤り。角膜混濁は死後時間とともに進み、環境温度の影響を受けます。ヒトで一律の時刻は決められませんが、20℃のウサギ実験では死後10〜14時間でも瞳孔部を透見でき、透見できなくなるのは18〜24時間でした。室温15℃で12時間では、透視不能と考えるには早い時期です。
b.腹壁の緑変が始まる。誤り。腐敗の外表所見は右下腹部の緑変から始まり、室温20℃で死後1〜2日ごろとされます。室温15℃前後で死後12時間では早すぎます。ただし腐敗の進行は環境で大きく変わります。
c.関節の硬直が高度である。正しい。死後硬直は基準上、死後6時間を過ぎて最大に達し、10時間までには最大に達するとされるので、死後12時間の高度の硬直に合います。
d.体温が15℃に下がっている。誤り。死後経過時間の推定に用いるHenssgeの式(標準条件)で計算すると、室温15℃で死後12時間の直腸温は体重70 kgで約28℃(50 kgで約25℃、90 kgで約30℃)で、まだ室温まで下がっていません。
e.体位を変えると死斑が容易に転移する。誤り。基準では死斑が完全に移動するのは死後6時間未満で、部分的な移動も24時間未満です。別の総説でも固定は6〜12時間とされます。死後12時間では一部が動くことはあっても、容易に転移する時期を過ぎています。
覚えるポイント
死後12時間は硬直が高度、死斑は転移しにくく、角膜はまだ透見可能、体温は室温より高い。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第104回医師国家試験問題および正答
- CQ1 死後画像診断の際、死後変化として認められる所見は何か?(厚生労働科学研究 報告書)
- Livor Mortis and Forensic Dermatology: A Review of Death-Related Gravity-Dependent Lividity and Postmortem Changes
- Development of a mobile application to estimate time of death based on the compound method
- Temporal pattern of postmortem color changes in the pupil region of the cornea in rabbits
- A Cross-Sectional Study of Time Since Death From Image Analysis of Corneal Opacity
- Implications of intracochlear decomposition gas formation in non-putrefied cadavers
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。