第103回医師国家試験 G19(2009年)
正答:b
問題
肝細胞癌に対する肝動脈化学塞栓療法で正しいのはどれか。
a.抗菌薬を注入する。
b.肝予備能に影響する。
c.門脈本幹閉塞例に施行する。
d.ラジオ波焼灼術と併用しない。
e.腫瘍が3個以上では適応とならない。
正答の理由
肝動脈化学塞栓療法(TACE)は、抗癌剤と塞栓物質を肝動脈から入れて腫瘍を阻血にする治療です。正常の肝組織にも影響が及びます。肝癌診療ガイドラインが引く報告では肝機能増悪が52%にみられ、肝不全は1.0%でした。適応もChild-Pugh分類A〜Bが前提で、肝予備能を見て決めます。公式正答はbです。
各選択肢の検討
a.抗菌薬を注入する。誤り。注入するのは抗癌剤を混合したリピオドール®と多孔性ゼラチン粒、または薬剤溶出性の球状塞栓物質で、抗菌薬ではありません。
b.肝予備能に影響する。正しい。肝機能増悪は頻度の高い有害事象で、Child-Pugh分類Cでは塞栓療法後に不可逆的な肝障害が出るリスクが高いと報告され、勧められていません。一方で、術前に単回行う場合は低下がわずかとする記載や、通常は重い肝障害に至らないとするアジア太平洋の指針もあり、影響の大きさは肝予備能や治療回数で変わります。
c.門脈本幹閉塞例に施行する。誤り。現行のガイドラインは、治療法によっては脈管侵襲の進行度で禁忌といえる場合があるとし、その例としてVp3、Vp4への塞栓療法には肝梗塞や肝膿瘍のリスクがあり、慎重に行うべきとしています。本幹閉塞例に通常行う治療ではありません。ただし門脈腫瘍栓を有する手術不能例に「考慮してよい」との弱い推奨もあり、絶対に行わないわけではありません。出題当時の版の記載は確認できていません。
d.ラジオ波焼灼術と併用しない。誤り。比較的大型の腫瘍に焼灼療法を行うときは、TACEとの併用で予後改善が期待できるとされます(弱い推奨)。血流による冷却効果を減らし、焼灼範囲を広げる目的です。
e.腫瘍が3個以上では適応とならない。誤り。現行の指針では4個以上の肝細胞癌の第一選択が塞栓療法で、1〜3個でも腫瘍径が3 cmを超えれば適応に入ります。多発はむしろ主な対象です。
覚えるポイント
TACEは多発・切除不能の多血性肝癌が主な対象。肝予備能に影響し、門脈本幹閉塞では肝梗塞のリスクから慎重に扱う。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第103回医師国家試験問題および正答
- 肝癌診療ガイドライン2021年版(日本肝臓学会)
- Asia–Pacific clinical practice guidelines on the management of hepatocellular carcinoma: a 2017 update
- Hepatocellular Carcinoma – MSD Manual Professional Edition
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。