胃癌術後の癌性腹膜炎|第103回医師国家試験D50

第103回医師国家試験 D50(2009年)

正答:b

問題

42歳の女性。腹部膨満感を主訴に来院した。10か月前に胃全摘術を受けた。皮膚はやや乾燥し蒼白である。腹部は全体に膨隆し、上腹部正中に手術瘢痕を認める。10か月前に摘出された胃の標本の肉眼像(別冊No.22A)、H-E染色標本(別冊No.22B)及び今回来院時の腹部単純CT(別冊No.22C)を別に示す。

考えられるのはどれか。

a.虚血性大腸炎

b.癌性腹膜炎

c.後腹膜腫瘍

d.消化管穿孔

e.腹腔内膿瘍

別冊No.22A 切除胃の肉眼像(2cmスケール付き)。粘膜ひだが中央に向かって集まり、発赤が目立つ。
別冊No.22A / 出典:厚生労働省・第103回D別冊(原本の該当ページ)
別冊No.22B H-E染色標本。細胞質が淡く濃染核を持つ細胞が粘膜内にびまん性に増えている。
別冊No.22B / 出典:厚生労働省・第103回D別冊(原本の該当ページ)
別冊No.22C 腹部単純CT。骨盤上部の高さで大量の腹水があり、前腹部の画像右寄りに大きな軟部腫瘤がある。
別冊No.22C / 出典:厚生労働省・第103回D別冊(原本の該当ページ)

正答の理由

摘出胃の組織は、細胞質が淡く核の偏在した細胞がびまん性に浸潤する低分化腺癌(印環細胞を含む)に見えます。10か月後のCTで大量の腹水と前腹部の大きな腫瘤があり、腹部膨満と皮膚の蒼白・乾燥も合わせて、癌性腹膜炎と考えます。公式正答はbです。腫瘤は大網の播種か、卵巣転移(Krukenberg腫瘍)かを1断面では区別できません。

画像の見方

22A:切除胃(スケール2cm)。粘膜ひだが中央の発赤部に向かって集中する。22B:濃染核と淡い細胞質を持つ細胞が既存の腺管の間をびまん性に浸潤し、印環細胞癌に合う。22C:腸骨翼の高さで大量の低吸収の腹水があり、前腹部(画像右寄り)に内部がやや不均一な大きな軟部腫瘤、腸管は背側に寄る。腫瘤の由来(大網か卵巣か)は断定しない。

各選択肢の検討

a.虚血性大腸炎。誤り。大腸の虚血による病気で、大量腹水と腹腔内の大きな腫瘤の説明がつきません。

b.癌性腹膜炎。正しい。低分化な胃癌の術後に大量腹水と腹腔内腫瘤が出現しており、腹膜播種を考えます。

c.後腹膜腫瘍。誤り。CTの腫瘤は腹水の中の前腹部側にあり、大量腹水を伴います。後腹膜に限局した病変の所見ではありません。

d.消化管穿孔。誤り。突然の激しい腹痛とショックが特徴で、遊離ガスが手がかりです。数か月の経過が想定される腹部膨満を主訴とする本例とは合いません。

e.腹腔内膿瘍。誤り。倦怠感・発熱・腹痛が主な症状で、本例に発熱や腹痛の記載はありません。腹腔全体の大量腹水も局所の膿瘍では説明しにくい所見です。

覚えるポイント

胃癌(特に印環細胞癌)術後の腹水+腹腔内腫瘤は腹膜播種を考える。卵巣転移も確認。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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