第103回医師国家試験 D33(2009年)
正答:a
問題
61歳の男性。血便を主訴に来院した。3日前、便に少量の血液が混じることに気付いた。眼瞼結膜に貧血を認める。腹部は平坦、軟で、左下腹部に圧痛を認める。血液所見:赤血球345万、Hb 10.2 g/dl。血液生化学所見:総蛋白7.8 g/dl、クレアチニン0.8 mg/dl、総コレステロール216 mg/dl、総ビリルビン1.0 mg/dl、AST 22 IU/l、ALT 28 IU/l。免疫学所見:CRP 0.6 mg/dl、CEA 1.1 ng/ml(基準5以下)。腹部CTではS状結腸に限局的な壁の肥厚のみを認める。下部消化管内視鏡写真(別冊No. 9)を別に示す。
治療として適切なのはどれか。
a.手術
b.放射線療法
c.抗癌化学療法
d.内視鏡的粘膜切除術
e.副腎皮質ステロイド投与

正答の理由
血便と貧血があり、内視鏡では管腔に張り出す周堤様の隆起と中央の潰瘍がみられ、進行大腸癌の形です。腹部CTでは病変はS状結腸に限局し、遠隔転移の記載はありません。結腸癌は局所にとどまれば手術が治療の中心で、根治を目指せるため、公式正答はaです。問題文に組織の記載はなく、実際には生検で確認してから切除し、CEAが正常でも癌は否定されません。
画像の見方
発赤した粘膜の隆起が管腔の大部分を取り囲み、内腔を狭めています。隆起の縁は盛り上がり、下側の中央に白苔を伴う潰瘍がみられ、周堤を伴う潰瘍性の腫瘍の形です。写真の右側には比較的正常な粘膜が残ります。壁深達度や組織型は写真からは決められません。
各選択肢の検討
a.手術。正しい。限局した結腸癌に対する根治治療の中心で、リンパ節を含めて切除します。
b.放射線療法。誤り。結腸癌の術後放射線療法の役割は確立していません。放射線を組み合わせるのは主に直腸癌です。
c.抗癌化学療法。誤り。化学療法はリンパ節転移があるときの補助療法や切除不能例に用います。切除の代わりにはなりません。
d.内視鏡的粘膜切除術。誤り。内視鏡切除は粘膜内の早期病変やポリープが対象です。本例は潰瘍を伴う厚い病変で、適応外です。
e.副腎皮質ステロイド投与。誤り。炎症性腸疾患などの治療で、潰瘍を伴う腫瘤の治療にはなりません。
覚えるポイント
潰瘍と周堤をもつ限局したS状結腸癌は手術。結腸癌で放射線療法の役割は確立していない。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第103回医師国家試験問題および正答
- Colorectal Cancer – Oncology – MSD Manual Professional Edition
- Colon Cancer Treatment (PDQ®) – NCI
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。