第103回医師国家試験 A59(2009年)
正答:c
問題
2か月の乳児。顔色不良を主訴に来院した。呼吸数36/分、脈拍132/分、整。血圧80/50mmHg。経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉85%。心雑音はないが、Ⅱ音は単一である。胸部エックス線写真で心胸郭比0.5、肺血管陰影は減弱している。心電図(別冊No.21A)と心エコー図(別冊No.21B)とを別に示す。
考えられるのはどれか。
a.心内膜床欠損症〈房室中隔欠損〉
b.Fallot四徴症
c.三尖弁閉鎖症
d.Ebstein奇形
e.完全大血管転位症
f.総肺静脈還流異常症
g.左心低形成症


正答の理由
公式正答はcです。チアノーゼ、Ⅱ音単一、肺血管陰影の減弱、心拡大なしは肺血流の少ないチアノーゼ性心疾患です。心電図はⅠ・aVLが上向き、Ⅱ・Ⅲ・aVFが下向きの左軸偏位で、V1〜V3の深いS波とあわせて右室の発達が悪い所見です。心エコーでは右房と右室の間に開く弁が見えません。三尖弁閉鎖では左軸偏位と左室肥大が特徴で、肺血流が減る型は心拡大が目立たず、肺血管影が減弱します。
画像の見方
21A:左軸偏位(Ⅰ・aVL陽性、Ⅱ・Ⅲ・aVF陰性)、V1〜V3の深いS波、V4〜V6のR波。21B:RAとRVの間に高輝度の帯状構造があり、三尖弁の開放が見えない。RA側とLA側は広く続いて見え、三尖弁閉鎖に必須の心房間交通と矛盾しない(静止画のため欠損の大きさは断定しない)。
各選択肢の検討
a.心内膜床欠損症〈房室中隔欠損〉。誤り。心内膜床欠損も左軸を示しますが、肺血流が増える疾患で、胸部写真は心拡大と肺血管影の増強が典型です。本例の心胸郭比0.5と肺血管陰影の減弱に合いません。
b.Fallot四徴症。誤り。肺血流減少は合いますが、Fallot四徴症の心電図は右軸偏位と右室肥大です。本例の左軸偏位と逆で、心エコーで右房右室間に開く弁が見えない点も違います。
c.三尖弁閉鎖症。正しい。左軸偏位・左室優位、肺血管影減弱、Ⅱ音単一がそろいます。三尖弁閉鎖でも多くの乳児に心雑音を聴きますが、性状は合併異常で変わるので、雑音がないだけでは否定できません。
d.Ebstein奇形。誤り。三尖弁が右室側に偏位する疾患で、弁の閉鎖ではありません。心電図は右軸偏位が通常で、写真は心拡大を示すことが多く、本例と合いません。
e.完全大血管転位症。誤り。Ⅱ音単一や雑音を欠くことは共通しますが、心電図は右軸偏位と右室肥大が典型で、本例の左軸偏位と合いません。
f.総肺静脈還流異常症。誤り。Ⅱ音の分裂や肺血流増加が多く、肺静脈閉塞型では肺うっ血を示します。本例の肺血管陰影減弱と合いません。
g.左心低形成症。誤り。左室と上行大動脈が低形成の疾患です。本例はLVが描出され、心電図は左室優位で逆です。
覚えるポイント
チアノーゼ+肺血流減少+左軸偏位・左室優位は三尖弁閉鎖症。Fallotの右軸偏位と区別する。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第103回医師国家試験問題および正答
- Tricuspid Atresia – MSD Manual Professional Edition
- Tetralogy of Fallot – MSD Manual Professional Edition
- Atrioventricular Septal Defect – MSD Manual Professional Edition
- Transposition of the Great Arteries (TGA) – MSD Manual Professional Edition
- Total Anomalous Pulmonary Venous Return (TAPVR) – MSD Manual Professional Edition
- Ebstein Anomaly – MSD Manual Professional Edition
- Hypoplastic Left Heart Syndrome – MSD Manual Professional Edition
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。