第103回医師国家試験 A53(2009年)
正答:c
問題
46歳の男性。両手の脱力を主訴に来院した。1年前から右手の筋力低下を認め、1か月前から左手の筋力低下が出現した。右側優位で両側上肢遠位部の筋力低下と筋萎縮とを認める。四肢腱反射は亢進し病的反射がみられる。感覚障害と膀胱障害とを認めない。血液生化学所見ではCK値は正常である。末梢神経伝導速度は正常である。推定される頸髄レベルでの病変の模式図(別冊No.18①〜⑤)を別に示す。
適切なのはどれか。
a.①
b.②
c.③
d.④
e.⑤

正答の理由
公式正答はcです。筋萎縮(下位運動ニューロン)と腱反射亢進・病的反射(上位運動ニューロン)が同居し、感覚・膀胱は保たれ、CKと神経伝導は正常です。筋萎縮性側索硬化症(ALS)で、脊髄では外側皮質脊髄路と前角が障害されます。図は背側が上なので、側索と腹側の前角が両側で塗られた③が合います。
画像の見方
背側を上にした頸髄の模式図。網かけは①後索の内側、②両側の側索、③両側の側索と前角、④後索全体と側索の外側、⑤前角から中心管前方の灰白質。凡例「病変部」つき。
各選択肢の検討
a.①。誤り。後索の内側のみの病変で、運動ニューロン障害を説明しません。後索が障害される疾患には脊髄癆があります。
b.②。誤り。側索のみの病変で、上位運動ニューロン徴候は説明できますが、筋萎縮を来す前角病変がありません。
c.③。正しい。両側の外側皮質脊髄路と前角がともに障害され、ALSの分布です。
d.④。誤り。後索と側索の病変で、ビタミンB12欠乏による亜急性連合変性症の分布です。本例に感覚障害はなく、前角病変もありません。
e.⑤。誤り。中心部の灰白質の病変です。脊髄空洞症のような分布で、温痛覚障害を伴うのが特徴であり、本例に合いません。
覚えるポイント
ALS=上位+下位運動ニューロン障害で感覚・膀胱は保たれる。脊髄では側索(皮質脊髄路)+前角。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第103回医師国家試験問題および正答
- Amyotrophic Lateral Sclerosis (ALS) and Other Motor Neuron Diseases (MNDs) – MSD Manual Professional Edition
- Syrinx of the Spinal Cord or Brain Stem – MSD Manual Professional Edition
- Vitamin B12 Deficiency – MSD Manual Professional Edition
- Syphilis – MSD Manual Professional Edition
- A Comprehensive Overview of Subacute Combined Degeneration: MRI Diagnostic Challenges and Treatment Pathways
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。