第102回医師国家試験 I55(2008年)
正答:a
問題
77歳の男性。頭痛を主訴に来院した。2か月前、飲酒後、自宅の浴室で転倒した。最近、歩行時に左足を引きずるようになった。意識は清明。左上下肢の筋力低下と深部腱反射亢進とを認める。頭部単純CT(別冊No. 10)を別に示す。
治療として最も適切なのはどれか。
a.穿頭ドレナージ
b.脳室ドレナージ
c.脳槽ドレナージ
d.嚢胞ドレナージ
e.膿瘍ドレナージ

正答の理由
2か月前の頭部外傷の後、徐々に頭痛と左片麻痺が出現した高齢の男性です。頭部単純CTでは患者右側(画像左側)の大脳半球で脳溝が描出されず、右側脳室は細い裂隙状に圧排されていて、左側脳室のほうが明らかに広くみえます。硬膜下にゆっくり血液が貯まる慢性硬膜下血腫として矛盾しません。確認した資料では、慢性硬膜下血腫で脳が圧迫されて症状が出たときは頭蓋骨に小さな穴を開けて貯まった血液を洗い流すとされ、約9割が手術で治癒すると記載されています。したがって穿頭ドレナージが最も適切で、公式正答はaです。
画像の見方
頭部単純CTの水平断像。画像左側すなわち患者の右側では大脳半球の脳溝が描出されず、脳実質が内板まで一様な濃度で占められてみえる。これに対し画像右側(患者左側)の円蓋部では脳溝が明瞭に描出される。右側脳室は細い裂隙状に圧排されており、左側脳室のほうが明らかに広い。正中構造の位置を画素で測ると、前方の大脳半球間裂と後方の大脳鎌はいずれも画像座標で450〜453pxにあり、頭蓋内板の左右中点(451px)とほぼ一致していて、明らかな正中偏位はない。この印刷写真では硬膜下腔の貯留そのものの濃度や境界を定量的に評価することはできない。
各選択肢の検討
a.穿頭ドレナージ。正しい。頭蓋骨に小孔をあけて硬膜下に貯留した液状の血腫を洗浄・排出する手技で、慢性硬膜下血腫の標準的な治療です。
b.脳室ドレナージ。誤り。脳室内出血や急性水頭症で髄液を排出する手技です。本例は右側脳室がむしろ圧排されており、水頭症の所見ではありません。
c.脳槽ドレナージ。誤り。くも膜下出血後などにくも膜下腔の血性髄液を排出する手技で、硬膜下の血腫は除去できません。
d.嚢胞ドレナージ。誤り。くも膜嚢胞など脳実質外の嚢胞性病変に対する手技で、本例の貯留は外傷後に生じた硬膜下血腫です。
e.膿瘍ドレナージ。誤り。発熱や炎症反応の記載がなく、膿瘍を示す所見もありません。
覚えるポイント
高齢者で軽微な頭部外傷の数週〜2か月後に頭痛・片麻痺が出れば慢性硬膜下血腫を疑い、穿頭洗浄・ドレナージを行う。
出典・参考資料
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。