第102回医師国家試験 I34(2008年)
正答:c・d
問題
ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染妊娠への対応として適切なのはどれか。2つ選べ。
a.妊娠中は妊婦への抗HIV薬投与を控える。
b.経腟分娩が望ましい。
c.出生時に児を清拭して母体血を除去する。
d.児への予防的抗HIV薬投与を行う。
e.母乳哺育を勧める。
正答の理由
公式正答はcとdです。わが国のHIV母子感染予防対策マニュアルは、母子感染を効果的に予防するために「1. 妊婦への抗HIV剤投与、2. 選択的帝王切開術、3. 出生時における児の清拭、4. 母乳遮断、5. 児への抗HIV剤投与」の5つすべてが必要としています。選択肢cとdはこのうちの3と5にあたります。
各選択肢の検討
a.妊娠中は妊婦への抗HIV薬投与を控える。誤り。妊娠中・分娩中の抗HIV薬投与は母子感染予防の第一の柱で、無治療では15〜45%とされる垂直感染率を大きく下げます。
b.経腟分娩が望ましい。誤り。出題当時の国内対策では選択的帝王切開術が5本柱の一つで、現在も分娩前後のHIV RNA量が1,000コピー/mLを超える場合や不明の場合は帝王切開が勧められます。なお第9版マニュアルでは、妊娠36週ごろにHIV RNA量がほぼ検出感度未満で、施設・スタッフ・夜間緊急時の対応などの条件が整う場合に経腟分娩を許容する考え方が示されており、無条件に「望ましい」とは言えません。
c.出生時に児を清拭して母体血を除去する。正しく、これが正答の一つ。母子感染予防の5本柱の一つに「出生時における児の清拭」が挙げられ、具体的には児を受け取ったらすばやく全身の血液をふき取り、温水で清拭・洗浄し、眼は生理食塩水で清拭するとされています。
d.児への予防的抗HIV薬投与を行う。正しく、これが正答の一つ。5本柱の一つで、児にはAZT(ジドブジン)シロップの予防投与が行われます。
e.母乳哺育を勧める。誤り。母乳はHIVの感染経路で、母乳を介した感染リスクは約15〜25%とされます。国内では母乳遮断(完全人工栄養)が予防の柱で、抗HIV薬・選択的帝王切開術との併用で感染率は1%以下になります。
覚えるポイント
HIV母子感染予防の5本柱は、妊婦への抗HIV薬・選択的帝王切開・出生時の児の清拭・母乳遮断・児への抗HIV薬。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第102回医師国家試験問題および正答
- HIV母子感染予防対策マニュアル 第9版(厚生労働科学研究費補助金エイズ対策政策研究事業)
- Human Immunodeficiency Virus (HIV) Infection
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。