第102回医師国家試験 H24(2008年)
正答:e
問題
11か月の乳児。嘔吐と不機嫌とを主訴に午前の外来を受診した。昨日から哺乳量が減少し、腹部を痛がるような動作が認められた。今朝から不機嫌で、ミルクを1回嘔吐した。ベッド上で腹部を診察しようとすると号泣し、手足を激しく動かすため診察が困難である。
対応として正しいのはどれか。
a.四肢を拘束する。
b.ミルクを飲ませる。
c.催眠薬を投与する。
d.午後の外来への受診を指示する。
e.母親に抱いてあやすよう指示する。
正答の理由
公式正答はeです。11か月で、腹部を痛がる動作と嘔吐、不機嫌があり、MSD ManualのIntussusceptionの項が述べる腸重積の好発年齢(生後6か月から3歳、70 %が2歳未満)と初発症状(突然の強い疝痛が15〜20分ごとに反復し、しばしば嘔吐を伴う)に合致します。MSD ManualのAcute Abdominal Painの項は、筋性防御(不随意の腹筋収縮)を、敏感な患者や不安な患者が示す素早い随意的なすくみと区別しなければならないとしています。号泣して手足を動かしている乳児では随意的な腹壁の緊張が加わるため、腹部腫瘤・圧痛・筋性防御を評価できません。母親に抱いてあやしてもらい、児が落ち着いた状態をつくってから腹部を診るのが、侵襲を加えずに診察を可能にする方法です。
各選択肢の検討
a.四肢を拘束する。誤り。啼泣と腹壁の緊張をかえって強め、腹部腫瘤や圧痛という診断に必要な所見を取りにくくします。
b.ミルクを飲ませる。誤り。嘔吐があり外科的疾患を否定できない段階での経口摂取で、MSD Manualが腹膜炎徴候のある児に示す経鼻胃管吸引という方針とも逆向きです。
c.催眠薬を投与する。誤り。診断がつく前に意識水準を下げると、腹痛の有無や活気といった経過観察に必要な所見が評価できなくなります。
d.午後の外来への受診を指示する。誤り。MSD Manualは、腸重積では検査と処置を緊急に行うべきで、時間が経つほど生存率と非手術的整復の成功率が有意に低下すると述べています。いったん帰宅させて待たせる対応は危険です。
e.母親に抱いてあやすよう指示する。正しく、これが正答。児を落ち着かせることで腹壁の緊張が取れ、腹部腫瘤・圧痛の評価が可能になります。
覚えるポイント
乳児の腹部診察は泣かせたままでは所見が取れない。まず母親に抱かせて落ち着かせ、腸重積など緊急性のある疾患を念頭に同日中に評価する。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第102回医師国家試験問題および正答
- Intussusception(MSD Manual Professional Edition)
- Acute Abdominal Pain(MSD Manual Professional Edition)
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。