高齢入院患者の夜間の意識変容(せん妄)|第102回医師国家試験H22

第102回医師国家試験 H22(2008年)

正答:c

問題

72歳の女性。転倒による腰椎圧迫骨折のため整形外科病棟に入院した。入院当夜に「ここはどこ」、「助けて」と大声を出して興奮し始めた。周囲の者には見えない相手と争っている様子となり不穏となった。数時間にわたってこのような状態が続いた。翌朝覚醒時、見当識に障害はなく落ち着いているが昨夜のことは記憶にない。入院前には精神症状はみられなかった。

考えられるのはどれか。

a.昏迷

b.解離

c.せん妄

d.Korsakoff症候群

e.偽認知症〈偽痴呆〉

正答の理由

公式正答はcです。MSD ManualのDeliriumの項は、せん妄を注意・認知・意識水準の急性・一過性で通常は可逆性の動揺性障害と定義し、65歳を超えて入院した患者の15〜50 %が入院中のいずれかの時点でせん妄を経験すること、症状は数分から数時間の単位で動揺し日中に軽くなって夜間に悪化すること、時間や場所の見当識が失われ幻覚・妄想がみられること、易刺激的で興奮し過活動になる患者がいることを述べています。本例は入院前に精神症状がなく、入院当夜に「ここはどこ」という失見当識と、周囲には見えない相手と争うという幻覚を伴う興奮が数時間続き、翌朝には見当識が回復して落ち着き、夜間のことを覚えていません。急性発症・動揺性・夜間増悪・可逆性というせん妄の特徴にそのまま合致します。

各選択肢の検討

a.昏迷。誤り。意識は保たれながら自発的な言動が失われる状態で、大声を出して興奮し数時間動き続けた本例の経過とは逆です。

b.解離。誤り。MSD Manualは、精神疾患はせん妄と違って注意障害や症状の動揺をほとんど起こさないとしています。本例は高齢・入院という身体的契機の後に失見当識と幻覚が急性に出現しており、せん妄の経過です。

c.せん妄。正しく、これが正答。急性発症、数時間の動揺、夜間の増悪、幻覚を伴う興奮、翌朝の回復という経過がMSD Manualの記載と一致します。

d.Korsakoff症候群。誤り。MSD ManualのThiamine Deficiencyの項は、Korsakoff精神病を「精神の混乱、発声障害、最近の出来事の記憶障害を伴う作話」からなるものとし、慢性のチアミン欠乏から生じ、改善には1〜3か月を要し神経学的脱落の回復もしばしば不完全であると述べています。翌朝には見当識も精神状態も正常化している本例の一過性の経過と合いません。

e.偽認知症〈偽痴呆〉。誤り。MSD Manualは、高齢のせん妄患者が静かで引きこもった状態になり抑うつと取り違えられることがあると述べており、本例のように幻覚を伴って興奮し一晩で回復する病像を指す概念ではありません。

覚えるポイント

高齢者が入院直後の夜間に失見当識・幻覚・興奮を起こし翌朝には回復する経過は、まずせん妄を考える。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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