第102回医師国家試験 H21(2008年)
正答:b
問題
28歳の女性。1週前に嘔気で受診し、薬剤を処方された。その後、別の医療機関で妊娠と診断された。薬剤による胎児への影響を心配して、薬剤を処方した医療機関に再来院した。
対応として適切なのはどれか。
a.「当院の産婦人科に入院して中絶しましょう」
b.「妊娠や服薬の状況について詳しく教えてください」
c.「あなたが不注意なために、こういう問題が起こったのですよ」
d.「病院の苦情を担当する課が対応しますので、そちらで相談してください」
e.「なぜ、そんなことを考えるのですか。元気な赤ちゃんを産むように頑張りましょう」
正答の理由
公式正答はbです。胎児への影響を評価するには、妊娠週数、服用した薬剤の名称と使用量、服薬した時期と期間という具体的な事実がまず必要です。厚生労働省事業として設置された国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」は、まさに「妊娠していることを知らずにお薬を飲んでしまって心配」という相談を受け付けており、相談にあたっては薬の名称・使用量が分かるもの(お薬手帳など)を用意し、薬の詳しい情報を入力するよう求めています。つまり評価の前提として服薬状況の聴取が欠かせません。医学教育モデル・コア・カリキュラムも、患者や家族の話を傾聴して不安等の感情を理解し共感すること(CM-01-02-02)、患者の医療への期待や解釈モデルを聞き出すこと(GE-01-03-01)を求めています。bは事実の聴取と傾聴を同時に満たす応答です。
各選択肢の検討
a.「当院の産婦人科に入院して中絶しましょう」。誤り。薬剤名・用量・服薬時期を確かめる前に妊娠の中断を提案しており、妊娠と薬情報センターが前提としている情報収集と評価の手順を飛ばしています。
b.「妊娠や服薬の状況について詳しく教えてください」。正しく、これが正答。影響の評価に必要な薬剤名・使用量・服薬時期と妊娠週数を聴き取る問いで、同時に患者の話を傾聴する姿勢を示します。
c.「あなたが不注意なために、こういう問題が起こったのですよ」。誤り。患者を責める発言で、コア・カリキュラムが求める傾聴と共感に反し、必要な情報も得られません。
d.「病院の苦情を担当する課が対応しますので、そちらで相談してください」。誤り。胎児影響という医学的相談を苦情処理に振り替えるもので、処方した医師自身が応じるべき相談から離れています。
e.「なぜ、そんなことを考えるのですか。元気な赤ちゃんを産むように頑張りましょう」。誤り。心配の内容を聴かずに患者の感情を否定して励ましており、評価に必要な情報も得られません。
覚えるポイント
妊娠に気づかず服薬した不安には、まず妊娠週数と薬剤名・使用量・服薬時期を具体的に聴き取り、その事実に基づいて説明する。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第102回医師国家試験問題および正答
- 妊娠と薬について知りたい方へ(国立成育医療研究センター 妊娠と薬情報センター)
- 妊娠と薬情報センター(国立成育医療研究センター)
- 医学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)(文部科学省)
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。