生検で印環細胞癌と判明した胃病変の治療選択|第102回医師国家試験G45

第102回医師国家試験 G45(2008年)

正答:e

問題

52歳の男性。上腹部痛を主訴に来院した。1か月前から食後に上腹部痛を自覚するようになった。胃内視鏡写真(別冊No.2A)と生検組織H-E染色標本(別冊No.2B)とを別に示す。

治療として適切なのはどれか。

a.アルゴンプラズマ凝固

b.抗癌化学療法

c.放射線治療

d.粘膜切除術

e.胃切除

別冊No.2A 胃内視鏡写真。胃粘膜に境界の不明瞭な発赤を伴う陥凹性病変があり、周囲粘膜はやや隆起し、白色の付着物が散在する。
別冊No.2A / 出典:厚生労働省・第102回G別冊(原本の該当ページ)
別冊No.2B 生検組織H-E染色標本(強拡大)。淡明から空胞状の細胞質をもち、濃染する核が細胞辺縁へ三日月状に圧排された細胞が、腺管を作らずびまん性・非結合性に増殖している。
別冊No.2B / 出典:厚生労働省・第102回G別冊(原本の該当ページ)

正答の理由

内視鏡写真では胃粘膜に境界の不明瞭な発赤を伴う陥凹性病変があり、生検のH-E染色では淡明な細胞質が核を細胞辺縁へ押しやった印環細胞が、腺管を作らずびまん性に増殖しています。日本胃癌学会の胃癌治療ガイドライン英語版(2021年、第6版)は、印環細胞癌(sig)を低分化腺癌とともに未分化型に分類しています。また内視鏡切除が標準治療(絶対適応)となるのはリンパ節転移の可能性が1%未満と見込める病変に限られ、未分化型では潰瘍所見のない(UL0)cT1aで2 cm以下という狭い条件が付きます。本例は写真から大きさ・深達度・潰瘍の有無を確かめられず、内視鏡切除の絶対適応を満たすとは判断できません。NCIのPDQも、所属リンパ節郭清を伴う外科切除が胃癌の治療の第一選択であるとしています。公式正答はeです。

画像の見方

2A:胃粘膜に境界の不明瞭な発赤と陥凹を伴う病変があり、周囲粘膜はやや隆起してみえる。白色の付着物(粘液と考えられる)が散在する。写真からは病変の正確な大きさ・深達度・潰瘍の有無までは判定できない。2B:強拡大のH-E染色で、淡明から空胞状の細胞質をもち、濃染する核が細胞の辺縁に三日月状に圧排された細胞(印環細胞)が、腺管構造を作らずびまん性・非結合性に増殖している。核異型が明らかで、均一な小円形細胞がびまん性に増殖するリンパ腫の像ではない。

各選択肢の検討

a.アルゴンプラズマ凝固。誤り。粘膜表面を焼灼するだけで切除標本が得られず、深達度の評価も根治切除もできないため、胃癌の根治治療にはなりません。

b.抗癌化学療法。誤り。NCIのPDQは切除可能な胃癌の治療としてまず外科切除を挙げており、化学療法は周術期あるいは切除不能・再発例での治療です。

c.放射線治療。誤り。日本胃癌学会のガイドラインもNCIのPDQも、根治を目指す治療の柱を切除(内視鏡切除または胃切除)としており、放射線治療単独は標準治療に含まれません。

d.粘膜切除術。誤り。内視鏡切除の絶対適応はリンパ節転移の可能性が1%未満の病変に限られ、未分化型ではUL0・cT1a・2 cm以下に限られます。本例は未分化型(印環細胞癌)で、写真からその条件を満たすとは判断できません。

e.胃切除。正しい。内視鏡切除の適応を満たさない胃癌では、所属リンパ節郭清を伴う胃切除が標準治療です。

覚えるポイント

印環細胞癌は未分化型。内視鏡切除はリンパ節転移の可能性が1%未満と見込める病変に限られ、満たさなければリンパ節郭清を伴う胃切除を行う。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

第102回の一覧へ戻る

タイトルとURLをコピーしました