第102回医師国家試験 G12(2008年)
正答:b
問題
胎児心拍数陣痛図(別冊No. 1)を別に示す。
心拍数陣痛パターンと最も関係するのはどれか。
a.臍帯圧迫
b.児頭圧迫
c.羊水過多
d.子宮破裂
e.常位胎盤早期剝離

正答の理由
公式正答はbです。図は約10分間の記録で、子宮収縮が2.3〜2.6分間隔で4回あり、それぞれの収縮に重なって、下降開始から最下点まで約20〜45秒かけてゆるやかに下降する一過性徐脈が4回記録されています(画素計測では、徐脈の開始は収縮の開始の直後、記録された最下点は収縮の頂点の約+9〜+30秒、基線142拍/分からの下降幅は29〜47拍/分)。収縮と鏡像をなし、下降がゆるやかで、最下点が収縮の頂点の近くにあり、収縮が終わるころには基線へ戻るこの波形が早発一過性徐脈で、児頭が圧迫されて頭蓋内圧が上がり、迷走神経(副交感神経)が刺激されて生じるとされます。なお3回目と4回目は心拍の記録に脱落があり、その2つの最下点の正確な位置は図からは確定できません。
画像の見方
レビュー担当が assets/102g/102g012-figure.png(1560×758 px)上で画素計測した。横の大目盛は147 px、図中「1分」スケールバーの実測長は145 pxで一致するので大目盛=1分とした。縦は胎児心拍数の大目盛49 px=20拍/分、子宮収縮の大目盛39 px=20(相対目盛)で換算した。記録の長さは約10分。胎児心拍数の基線は約140〜145拍/分(全区間の中央値142拍/分)。子宮収縮は4回で、頂点(平坦部の中点)はおよそ0.99分・3.26分・5.82分・8.42分(間隔2.3〜2.6分)、相対目盛で基線が約30、頂点は97〜100(上限で頭打ち)。一過性徐脈も4回で、いずれも収縮に重なってゆるやかに下降する。記録された最下点は順に1.15分(103拍/分)・3.44分(113拍/分)・6.09分(112拍/分)・8.92分(95拍/分)、下降開始から最下点までは約23秒・25秒・34秒・44秒、基線からの下降幅は約29〜47拍/分。最下点と直前の子宮収縮の頂点との差は約+9秒・+11秒・+16秒・+30秒で、徐脈の開始はいずれも収縮の開始の直後(+4〜+11秒)である。ただし胎児心拍数の記録には脱落があり、3回目の徐脈は5.81〜6.17分がほぼ途切れ(6.06〜6.10分に短い断片があるだけ)、4回目も8.55〜8.76分と8.87〜8.92分が途切れているため、この2つの徐脈の真の最下点は図からは確定できない(3回目は脱落直前が117拍/分・断片が112拍/分、4回目は脱落直前が107拍/分・再開点が95拍/分)。1回目にも1.26〜1.32分の短い脱落がある(最下点の後)。読み取り誤差は時間±3秒、心拍数±3拍/分程度。基線細変動の程度はこの解像度では定量できないため判定を保留する。(作成担当の記録にあった「3回目の最下点 6.0分・96拍/分」はこの再計測では再現せず、その位置は記録脱落の区間にあたる。)
各選択肢の検討
a.臍帯圧迫。誤り。臍帯圧迫で生じるのは変動一過性徐脈で、子宮収縮との時間的関係が一定せず、下降と回復が急峻な波形をとります。図の徐脈は収縮ごとに同じ位置に現れ、下降は20〜45秒かけて緩やかです。
b.児頭圧迫。正しい、これが正答。児頭圧迫は頭蓋内圧上昇を介して迷走神経を刺激し、早発一過性徐脈を生じるとされます。図の、収縮に重なってゆるやかに下降し収縮の頂点付近で最下点をとる徐脈に一致します。
c.羊水過多。誤り。羊水が多い状態そのものが特定の一過性徐脈パターンを作るわけではありません。むしろ羊水が少ないときに臍帯が圧迫されやすくなります。
d.子宮破裂。誤り。子宮破裂では高度徐脈や遷延一過性徐脈など、収縮と対応しない重い心拍異常と母体のショック徴候が問題になります。図は基線が約140〜145拍/分に保たれています。
e.常位胎盤早期剝離。誤り。胎盤剝離による低酸素血症で生じるのは遅発一過性徐脈で、最下点が収縮の頂点より遅れ、回復も収縮の終了より後になります。図では最下点が収縮の頂点の近くにあり、収縮が終わるころには基線へ戻っています。
覚えるポイント
早発=児頭圧迫(収縮と鏡像、最下点が頂点と一致)、遅発=子宮胎盤循環不全(最下点が遅れる)、変動=臍帯圧迫(急峻・不定)。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第102回医師国家試験問題および正答
- 日本産科婦人科学会 第69回学術講演会「胎児機能不全の診断と管理」
- Fetal Monitoring During Labor and Delivery – MSD Manual Professional Edition
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。