第102回医師国家試験 G2(2008年)
正答:e
問題
腹膜炎を検出するのに陽性尤度比が最も高い徴候はどれか。
a.Rovsing徴候
b.Murphy徴候
c.筋性防御
d.反跳痛
e.板状硬
正答の理由
公式正答はeです。板状硬は腹膜の炎症に反応して腹壁の筋が不随意に収縮した状態(筋強直 rigidity)で、急性腹症診療ガイドライン2015が引用する「腹膜炎を検出する診察所見」の表では、陽性尤度比が筋強直3.7、打診痛2.4、筋性防御2.2、反跳痛2.0であり、筋強直が最も高い値です。筋強直の特異度は76〜100%と高く、これが高い陽性尤度比の理由です。Rovsing徴候とMurphy徴候はそれぞれ虫垂炎・急性胆囊炎を疑う徴候で、腹膜炎そのものを検出する所見としては扱われていません。なおガイドラインの表の項目名は「筋強直 rigidity」で、「板状硬」という語そのものの尤度比を示した一次資料は見当たりません。板状硬は筋強直が腹壁全体に及んだ状態を指す日本語の呼び方として読んでいます。
各選択肢の検討
a.Rovsing徴候。誤り。左下腹部の圧迫で右下腹部に痛みが出る虫垂炎の徴候で、腸腰筋テスト・閉鎖筋テストと合わせた虫垂炎に対する陽性尤度比は1.49〜2.06と報告されています。
b.Murphy徴候。誤り。急性胆囊炎の徴候で、同ガイドラインの表では急性胆囊炎に対する陽性尤度比2.8(95%CI 0.8〜8.69)です。腹膜炎の検出指標ではありません。
c.筋性防御。誤り。腹筋の「随意的」収縮で、腹痛以外に恐怖・不安・寒冷刺激でも生じます。腹膜炎に対する陽性尤度比は2.2です。
d.反跳痛。誤り。壁側腹膜の刺激徴候ですが必ずしも腹膜炎の存在を意味せず、陽性尤度比は2.0です。苦痛が大きいため、同等の尤度比を示す打診痛(2.4)で代用するよう勧められています。
e.板状硬。正しい、これが正答。腹膜の炎症による腹筋の「不随意的」収縮(筋強直)が腹壁全体に及んだ状態で、陽性尤度比3.7と直接的な腹膜刺激徴候の中で最も高い値です。
覚えるポイント
腹膜炎を検出する所見の陽性尤度比は筋強直(板状硬)3.7>打診痛2.4>筋性防御2.2>反跳痛2.0。Rovsingは虫垂炎、Murphyは胆囊炎の徴候。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第102回医師国家試験問題および正答
- 急性腹症診療ガイドライン2015 第VII章 急性腹症の診察
- Signs and syndromes in acute appendicitis: A pathophysiologic approach
- Acute Abdominal Pain – MSD Manual Professional Edition
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。