第102回医師国家試験 E49(2008年)
正答:c
問題
69歳の女性。外陰部の不快感と尿閉とを主訴に来院した。子宮が脱出し、膀胱瘤を伴う。腟は乾燥し、潰瘍形成が認められる。導尿で620mlの尿貯留が確認された。
診断はどれか。
a.尿道脱
b.子宮下垂
c.全子宮脱
d.不全子宮脱
e.子宮頸部延長症
正答の理由
子宮が脱出したうえに膀胱瘤を伴い、腟が乾燥して潰瘍を形成しているのが要点です。MSDマニュアルは、腟前壁と後壁の虚脱が頂部(子宮)の下垂とともに起こった状態を子宮procidentia=完全子宮脱と呼び、子宮が腟入口部の外へ突出しうると述べています。また、腟や子宮頸部の粘膜が腟の外へ出ると乾燥し、肥厚・慢性炎症・浮腫・潰瘍を生じるとしています。本例の腟の乾燥と潰瘍は、腟壁が反転して体外に露出していること、すなわち子宮全体が腟外へ脱出していることを示します。さらに下垂した骨盤臓器が尿流を間欠的に閉塞して尿閉と溢流性尿失禁を起こすとも記載されており、導尿620mlの尿貯留と合致します。なお子宮下垂・不全子宮脱・全子宮脱という段階分けは本邦で慣用的に用いられる分類で、子宮の下降の程度(腟内にとどまる/子宮頸部が腟口外に出る/子宮全体が腟外に出る)で分けます。MSDの用語では、このうち全子宮脱が uterine procidentia(完全子宮脱)に当たります。したがって診断は全子宮脱で、公式正答はcです。
各選択肢の検討
a.尿道脱。誤り。尿道粘膜が外尿道口から脱出する別の病態で、子宮の脱出や膀胱瘤を説明できません。
b.子宮下垂。誤り。子宮が下がっても腟内にとどまる軽度の段階で、腟壁が外に出て乾燥・潰瘍化することはありません。
c.全子宮脱。正しい。腟前後壁の虚脱を伴って子宮全体が腟入口部の外へ出た状態で、露出した腟粘膜が乾燥・潰瘍化し、尿流閉塞による尿閉も説明できます。
d.不全子宮脱。誤り。子宮の一部(頸部)だけが腟口から出て子宮体部は腟内に残る段階で、腟粘膜全体が外に出て乾燥・潰瘍化する所見とは合いません。
e.子宮頸部延長症。誤り。子宮頸部が伸びて下方に突出するもので、子宮体部の下垂や膀胱瘤を主体とする本例の所見とは異なります。
覚えるポイント
腟壁が外に出て乾燥・潰瘍化し、尿流閉塞で尿閉を起こすのは全子宮脱。子宮下垂・不全子宮脱では腟粘膜は外に露出しない。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第102回医師国家試験問題および正答
- Overview of Pelvic Organ Prolapse (POP) – Gynecology and Obstetrics – MSD Manual Professional Edition
- Uterine and Apical Prolapse – Gynecology and Obstetrics – MSD Manual Professional Edition
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。