第102回医師国家試験 D60(2008年)
正答:b
問題
40歳の女性。以前から過多月経があり、人間ドックで小球性低色素性貧血を指摘され来院した。便潜血反応陰性。子宮頸部細胞診クラスⅡ。骨盤部単純MRIのT2強調矢状断像(別冊No.25)を別に示す。
薬物療法として適切なのはどれか。
a.エストロゲン
b.GnRHアゴニスト
c.メトトレキサート
d.ブロモクリプチン
e.プロスタグランジン

正答の理由
40歳女性の過多月経と小球性低色素性貧血で、便潜血反応は陰性、子宮頸部細胞診はクラスⅡです。MRIのT2強調像に境界明瞭で低信号の類円形腫瘤があり、子宮筋腫による過多月経と考えます。MSDは、子宮筋腫がエストロゲンに反応して性成熟期に大きくなり閉経後に縮小すること、GnRHアナログが視床下部‐下垂体‐卵巣系を抑えてエストロゲンを減らし筋腫を縮小させること、他の薬で出血が止まらず貧血がある患者に用いること、または手術前に筋腫と子宮の体積を減らす目的で用いることを述べています。公式正答はbです。長期使用は更年期様症状や骨量減少を招くため避け、必要ならエストロゲン・プロゲスチンの少量併用(add-back療法)を行います。
画像の見方
骨盤部MRIのT2強調矢状断像。画像の右側に腰椎と仙骨があり、左側が腹側である。骨盤内に境界が明瞭で周囲の筋よりも信号の低い類円形の腫瘤が1つあり、内部はほぼ均一で、嚢胞を思わせる高信号域や液面形成は指摘できない。画素値を測ると腫瘤の平均は約64で、傍脊柱筋の約125よりはっきり低い。大きさを隣接する腰椎椎体と比べると、腫瘤の前後径は椎体の前後径とほぼ同じ(約1.0倍)、頭尾径は椎体の高さの約3倍である。印刷の解像度では子宮内膜や接合帯の線を追えないため、腫瘤が子宮体部のどの層から発生しているか(漿膜下・筋層内・粘膜下)は読み取れず、子宮腺筋症との鑑別も本図だけではできない。
各選択肢の検討
a.エストロゲン。誤り。MSDは、筋腫がエストロゲンに反応するため性成熟期に大きくなり閉経後に縮小すると述べています。エストロゲンの投与は筋腫を小さくする治療ではありません(MSDが異常子宮出血の調節に挙げるのはエストロゲン・プロゲスチン配合薬などで、これらは筋腫自体を縮小させません)。
b.GnRHアゴニスト。正しい。エストロゲンを低下させて筋腫を縮小させ、出血を抑えて貧血を改善します。手術前の体積減少にも用います。
c.メトトレキサート。誤り。異所性妊娠や絨毛性疾患などに用いる薬で、子宮筋腫の治療薬ではありません。
d.ブロモクリプチン。誤り。ドパミン作動薬で、高プロラクチン血症やプロラクチン産生下垂体腺腫に用います。
e.プロスタグランジン。誤り。子宮収縮薬として分娩誘発や流産後の処置に用いる薬で、筋腫の薬物療法ではありません。
覚えるポイント
過多月経+鉄欠乏性貧血+T2低信号で境界明瞭な子宮腫瘤は子宮筋腫。薬物療法はGnRHアゴニスト(長期使用は低エストロゲン症状に注意)。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第102回医師国家試験問題および正答
- Uterine Fibroids – Gynecology and Obstetrics – MSD Manual Professional Edition
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。