臍ヘルニア|第102回医師国家試験D40

第102回医師国家試験 D40(2008年)

正答:a

問題

3か月の乳児。へその膨らみを心配する母親に連れられて来院した。生後間もなくからへその膨らみがあったが、出産した病院からは様子を見るように指示されて退院した。指示を守って育児をしていたが、徐々に膨らみは大きくなってきた。お腹がすいてミルクを欲しがるときには、号泣して、膨らみは直径3cmになり、皮膚も赤黒くなると言う。ミルクの飲みは良い。身長63cm、体重6.5kg。母親が持ってきた号泣時の写真(別冊No. 13)を別に示す。

母親への説明で正しいのはどれか。

a.「もう少し成長すると自然に治ることが多いです」

b.「心血管系奇形の合併が多いので検査が必要です」

c.「泣いて膨らんだ時に診察しないと分かりません」

d.「膨らんだときは手で押し込んでください」

e.「穿刺して診断をつける必要があります」

別冊No. 13 号泣時の乳児の腹部写真。臍部が半球状に膨隆し、頂部に臍の瘢痕がある。膨隆部の皮膚は赤みを帯びる。
別冊No. 13 / 出典:厚生労働省・第102回D別冊(原本の該当ページ)

正答の理由

公式正答はaです。写真では臍部が滑らかな半球状に膨隆し、頂部に臍の瘢痕があります。臍輪を通って腹腔内容が脱出する臍ヘルニアで、啼泣や腹圧の上昇で大きくなり、皮膚が充血して赤みを帯びます。先天性の臍ヘルニアは絞扼を起こすことがまれで、多くは数年以内に自然に消退するため、通常は治療せず経過をみます。発育も良好で、潰瘍・壊死・還納できない緊満といった嵌頓を示す所見もありません。

画像の見方

仰臥位の乳児の腹部を斜め横から撮った写真で、臍の部位が滑らかな半球状に膨隆し、その頂部に臍の瘢痕がある。膨隆部の皮膚は周囲と連続し、赤みを帯びているが、潰瘍・壊死・光沢を伴う強い緊満や暗紫色への変色はみられない。腹壁正中に膜で覆われた臓器が脱出する所見(臍帯ヘルニア)や、臍の側方に腹壁の欠損がある所見(腹壁破裂)はない。画面左上に乳児の手指と衣服が写る。写真1枚のみで、臍輪の径や還納の可否は判断できない。

各選択肢の検討

a.「もう少し成長すると自然に治ることが多いです」。正しく、これが正答。先天性臍ヘルニアは絞扼を起こすことがまれで、多くが数年以内に自然に消退します。

b.「心血管系奇形の合併が多いので検査が必要です」。誤り。他の先天異常(先天性心疾患・腎奇形・染色体異常など)を約2/3に合併するのは、腹壁正中から膜に覆われた臓器が脱出する臍帯ヘルニア〈omphalocele〉です。本例のような臍ヘルニアは別の病態で、この理由で心精査を勧める根拠はありません。

c.「泣いて膨らんだ時に診察しないと分かりません」。誤り。臍輪の欠損は啼泣していないときでも触診で確認でき、診断に号泣時の診察は必須ではありません。実際に写真だけでも膨隆が確認できています。

d.「膨らんだときは手で押し込んでください」。誤り。還納しても臍輪の欠損が早く閉じるわけではなく、家庭で押し込むよう指導する必要はありません。

e.「穿刺して診断をつける必要があります」。誤り。ヘルニア嚢の中身は腹腔内臓器で、穿刺は診断にも治療にもならず、腸管を傷つける危険があります。

覚えるポイント

乳児の臍ヘルニアは絞扼がまれで、多くが数年以内に自然に消退する。診察は触診で足り、穿刺や心精査は不要。先天異常の合併が多いのは臍帯ヘルニア。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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