胸部大動脈瘤による嗄声|第102回医師国家試験D28

第102回医師国家試験 D28(2008年)

正答:c

問題

64歳の女性。嗄声を主訴に来院した。1か月前から嗄声を自覚し、飲水時にむせるようになった。意識は清明。身長150cm、体重55kg。脈拍80/分、整。血圧162/94mmHg。胸骨右縁第2肋間で2/6度の収縮期駆出性雑音を聴取する。胸部造影CT(別冊No. 5)を別に示す。

適切なのはどれか。

a.甲状腺摘出術

b.左肺上葉切除術

c.人工血管置換術

d.縦隔腫瘍摘出術

e.大動脈弁置換術

別冊No. 5 上縦隔の造影CT横断像。正中前方に造影される血管腔があり、その左後方により大きい円形の造影される腔を認める。辺縁には造影されない三日月状の部分がある。
別冊No. 5 / 出典:厚生労働省・第102回D別冊(原本の該当ページ)

正答の理由

公式正答はcです。胸部造影CTで、上行大動脈に相当する前方の血管腔のほかに、その左後方に大きく造影される円形の腔があり、辺縁に造影されない三日月状の部分(壁在血栓に相当)を伴います。胸部大動脈瘤で、左反回神経(および迷走神経)が圧迫されると嗄声を来します。胸部大動脈瘤の周囲圧迫症状としては、背部痛・咳嗽や喘鳴・嚥下障害・嗄声・上大静脈症候群が挙げられています。症状があるか大きい瘤は治療の対象で、人工血管に置き換える開胸手術が行われます。なお現在は、解剖学的に可能であればステントグラフト内挿術が先に検討されることが増えています。

画像の見方

胸骨の後方、縦隔前部に造影された円形の血管腔(上行大動脈に相当)がある。画面右側(患者の左側)の後方には、それより大きい円形で強く造影される腔があり、後外側の辺縁に造影されない三日月状の低吸収域が接する。両者の間のほぼ正中に気管の空気像がある。大きな腔は左の胸腔側へ張り出し、その近傍の肺の含気は乏しい。胸水や充実性の軟部腫瘤は指摘できない。横断1枚のみで、瘤の範囲・最大径・部位(弓部か下行部か)は特定できない。

各選択肢の検討

a.甲状腺摘出術。誤り。嗄声の原因となる甲状腺腫瘍を示す所見がCTにありません。

b.左肺上葉切除術。誤り。反回神経を巻き込む肺腫瘍はみられず、大きな構造物は造影される血管腔です。

c.人工血管置換術。正しく、これが正答。胸部大動脈瘤による左反回神経麻痺で、治療は瘤を人工血管に置き換えることです。

d.縦隔腫瘍摘出術。誤り。大きな腔は造影剤で血管内腔と同じように染まっており、充実性の縦隔腫瘍ではありません。

e.大動脈弁置換術。誤り。収縮期駆出性雑音は大動脈弁狭窄でも生じますが、嗄声の原因にはならず、本例で治療すべきは弁ではありません。

覚えるポイント

胸部大動脈瘤は左反回神経を圧迫して嗄声を来す。治療は人工血管置換(または条件が合えばステントグラフト内挿)。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

第102回の一覧へ戻る

タイトルとURLをコピーしました