肺癌による上大静脈症候群|第102回医師国家試験A53

第102回医師国家試験 A53(2008年)

正答:c

問題

50歳の男性。呼吸困難を主訴に来院した。1か月前から咳嗽と労作時呼吸困難とが出現し、徐々に増悪した。3日前から顔面と上肢とに浮腫が出現した。胸部右側で呼吸音の減弱を認める。胸部エックス線写真(別冊No. 20)を別に示す。経気管支擦過細胞診はクラスⅣである。

考えられるのはどれか。

a.心不全

b.癌性リンパ管症

c.上大静脈症候群

d.Pancoast症候群

e.Lambert-Eaton症候群

別冊No. 20 胸部エックス線写真正面像。右上縦隔が幅広く、右肺門から下肺野にかけて広い濃度上昇があり、右横隔膜と心陰影右縁が不明瞭である。
別冊No. 20 / 出典:厚生労働省・第102回A別冊(原本の該当ページ)

正答の理由

経気管支擦過細胞診がクラスⅣで悪性が疑われ、胸部エックス線写真で右上縦隔の拡大と右肺の広い陰影があります。そこへ3日前からの顔面と上肢の浮腫が加わっており、腫瘍による上大静脈の閉塞で上半身の静脈還流が妨げられた上大静脈症候群と考えられます。悪性の上大静脈症候群の85〜90 %は肺癌と非Hodgkinリンパ腫によるもので、顔面・頸部の腫脹と呼吸困難が代表的な症状です。公式正答はcです。

画像の見方

胸部エックス線正面像。右上縦隔の陰影が幅広く張り出し、右肺門部から右中下肺野(とくに下肺野)にかけて広い均一な濃度上昇があり、右横隔膜の輪郭と心陰影の右縁が追えない。左肺野は比較的含気が保たれているが、左下肺野にも淡い陰影がある。気管の明らかな偏位や骨破壊は本像では指摘できない。

各選択肢の検討

a.心不全。誤り。右心不全では頸静脈怒張とともに下腿など下半身に浮腫が出ます。顔面と上肢に限って浮腫が出る本例の分布とは合いません。

b.癌性リンパ管症。誤り。腫瘍のリンパ管内進展による病態で、呼吸困難と両肺のびまん性陰影を来しますが、顔面と上肢の浮腫は説明できません。

c.上大静脈症候群。正しい。腫瘍による上大静脈の閉塞で顔面・頸部・上肢の腫脹と呼吸困難が生じます。胸部エックス線の右上縦隔の拡大も合致します。

d.Pancoast症候群。誤り。肺尖部腫瘍が腕神経叢や胸壁に浸潤して肩・上肢の疼痛や手の筋萎縮を来す病態で、本例の浮腫の分布とは異なります。

e.Lambert-Eaton症候群。誤り。小細胞肺癌に伴う傍腫瘍性の神経筋接合部障害で、近位筋の筋力低下が主徴です。浮腫は来しません。

覚えるポイント

顔面・上肢に限った浮腫+縦隔腫瘤=上大静脈症候群。原因の大半は肺癌とリンパ腫で、治療は原疾患の治療(化学療法・放射線)とステント。

出典・参考資料

問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。

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