第102回医師国家試験 A43(2008年)
正答:a
問題
21歳の男性。難聴を主訴に来院した。10歳ころから両側難聴があったが原因不明と言われていた。3年前から両側難聴が進行し、昨年から補聴器を装用している。時々、浮動性めまいを自覚している。また、家族性腎炎の診断で7歳から透析を受けている。オージオグラム(別冊No. 11)を別に示す。
考えられる疾患はどれか。
a.Alport症候群
b.Bartter症候群
c.Goodpasture症候群
d.Treacher Collins症候群
e.von Recklinghausen病

正答の理由
家族性腎炎で7歳から透析を要する末期腎不全があり、10歳ころからの両側難聴が進行しています。オージオグラムは2000Hzまで気導と骨導がほぼ重なって気骨導差がなく(4000Hzのみ右に約20dBの差がある)、高音域ほど閾値が高い高音漸傾型の両側感音難聴が主体です。Alport症候群(遺伝性腎炎)はCOL4A3・COL4A4・COL4A5などIV型コラーゲン遺伝子の変異による腎炎で、高音域を侵す感音難聴をしばしば伴い、白内障や前円錐水晶体などの眼所見を合併することもあります。本例の組合せに最もよく合致し、公式正答はaです。
画像の見方
125〜8000Hzのオージオグラム。目盛り線を画素で較正して読み取った値(±5dB程度の誤差がありうる)では、右の気導(○)は250Hz約30dB、1000Hz約46dB、2000Hz約45dB、4000Hz約75dB、8000Hz約96dBと高音域ほど強く低下し、左の気導(×)も8000Hzで約90dBまで落ちる。骨導([・])は2000Hzまで気導とほぼ重なって明らかな気骨導差がない一方、4000Hzでは両耳とも約56dBで、同周波数の右の気導との間には約20dBの差がみられる。8000Hzには骨導の記録がない。全体としては高音漸傾型の両側感音難聴が主体である。
各選択肢の検討
a.Alport症候群。正しい。IV型コラーゲン異常による遺伝性腎炎で、血尿・蛋白尿から慢性腎臓病へ進行し、高音域優位の感音難聴を高頻度に伴います。
b.Bartter症候群。誤り。尿細管でのNaCl再吸収障害による低カリウム血症・低クロール血症性代謝性アルカローシスと多尿が本態の塩類喪失性尿細管障害です。感音難聴を伴う病型も報告されていますが、家族性腎炎として小児期に末期腎不全へ至る本例の経過には合いません。
c.Goodpasture症候群。誤り。抗糸球体基底膜抗体による急速進行性糸球体腎炎と肺胞出血が主体で、難聴は特徴ではありません。
d.Treacher Collins症候群。誤り。TCOF1などの変異による下顎顔面の形成不全で、小耳症など外耳の形態異常を伴います。確認した資料では約半数に難聴がみられ、その原因は中耳の耳小骨の異常または外耳道の低形成とされており、伝音難聴が主体です。気骨導差のない感音難聴と末期腎不全を来す本例とは合いません。
e.von Recklinghausen病。誤り。神経線維腫症1型のことで、6個以上のカフェ・オ・レ斑と神経線維腫が主徴です。両側の前庭神経鞘腫による難聴がみられるのは2型であり、腎炎も特徴ではありません。
覚えるポイント
遺伝性腎炎+高音障害型の両側感音難聴=Alport症候群。眼所見(前円錐水晶体・白内障)も手がかりになる。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第102回医師国家試験問題および正答
- Alport Syndrome – Nephrology – MSD Manual Professional Edition
- Anti-Glomerular Basement Membrane (Anti-GBM) Disease – Pulmonology – MSD Manual Professional Edition
- Neurofibromatosis – Pediatrics – MSD Manual Professional Edition
- Bartter Syndrome: Perspectives of a Pediatric Nephrologist
- Treacher Collins syndrome – MedlinePlus Genetics
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。