第102回医師国家試験 A33(2008年)
正答:e
問題
70歳の女性。口腔内びらんと皮疹とを主訴に来院した。5日前に頭痛と咽頭痛とが生じたため、感冒薬を内服した。3日前から発熱、関節痛、結膜充血、口腔内びらんに加えて、顔面、体幹および四肢に紅色皮疹が出現した。背部の写真(別冊No.2A)と顔面の写真(別冊No.2B)とを別に示す。
考えられるのはどれか。
a.Sweet病
b.結節性紅斑
c.膿疱性乾癬
d.尋常性天疱瘡
e.Stevens-Johnson症候群


正答の理由
薬剤内服のあと、発熱・関節痛に続いて顔面・体幹・四肢に紅斑が急速に広がり、口唇・口腔粘膜のびらんと結膜充血という粘膜病変を伴っています。MSDマニュアルは、Stevens-Johnson症候群では倦怠感・発熱・頭痛・咳・角結膜炎の前駆症状ののちに、顔・頸・上部体幹から紅斑が突然現れて融合し、皮膚・粘膜・眼の疼痛を伴うと記載しています。写真でも背部に融合する紅斑、口唇のびらんと痂皮、顔面・頸部の紅斑が確認でき、経過と所見が合致します。なお同マニュアルは原因薬の開始から1〜3週で発症するのが一般的としており、本例は内服から2日と短い点は典型より早い経過です。公式正答はeです。
画像の見方
2A:背部・両肩・上腕に紅色斑が密在して融合し、間に正常色の皮膚が網目状に残る。写真の解像度では水疱や膿疱、表皮剥離は確認できない。2B:口唇はびらんと暗褐色の痂皮で覆われ、口囲から頬・顎・頸部に紅色斑が散在する。眼球結膜は写真の範囲に入っていない。
各選択肢の検討
a.Sweet病。誤り。発熱と好中球増多を伴って、圧痛のある紅色の丘疹・結節・局面が上肢や頭頸部に多発し、真皮上層に成熟好中球が密に浸潤する好中球性皮膚症です。古典型で口腔粘膜の潰瘍を伴う頻度は低く(報告では2〜12%)、薬剤内服後に口唇・口腔と眼の粘膜病変を伴って全身に融合性紅斑が広がる本例の経過とは異なります。
b.結節性紅斑。誤り。下腿伸側に有痛性の皮下結節をつくる脂肪織炎で、体幹に広がる融合性の紅斑や粘膜病変はきたしません。
c.膿疱性乾癬。誤り。発熱とともに紅斑上に無菌性膿疱が多発するもので、本例の写真に膿疱はなく、薬剤内服後の粘膜病変という経過とも合いません。
d.尋常性天疱瘡。誤り。口腔粘膜のびらんで始まり弛緩性水疱とびらんを生じる自己免疫性水疱症ですが、数日で全身に紅斑が広がる急性薬疹の経過とは異なります。
e.Stevens-Johnson症候群。正しい。薬剤を契機とした重症の皮膚粘膜反応で、発熱・全身の紅斑に加えて口腔・眼の粘膜病変を伴います。
覚えるポイント
薬剤内服後の発熱+全身の紅斑+口唇・口腔と眼の粘膜びらんはStevens-Johnson症候群。原因薬の中止と全身管理を急ぐ。
出典・参考資料
- 厚生労働省:第102回医師国家試験問題および正答
- Stevens-Johnson Syndrome (SJS) and Toxic Epidermal Necrolysis (TEN) – MSD Manual Professional Edition
- Erythema Nodosum – MSD Manual Professional Edition
- Pemphigus Vulgaris – MSD Manual Professional Edition
- Psoriasis – MSD Manual Professional Edition
- Sweet's syndrome – a comprehensive review of an acute febrile neutrophilic dermatosis (Orphanet J Rare Dis 2007)
問題と正答の出典は厚生労働省です。解説は本サイトが作成した学習用の解説で、厚生労働省の公式解説ではありません。出題時点の設問に沿って説明しています。